ライフ

比叡山大阿闍梨が説く「文字や言葉に丁寧に向き合う」という教え

 2022年も間もなく年の瀬。新しく迎える年がよい年になるよう、静かに振り返る時間をとってみませんか。『比叡山大阿闍梨 心を掃除する』を出版した比叡山の光永圓道大阿闍梨が説くのは、「文字や言葉に丁寧に向き合う」という教え。言葉を自分自身の手で綴ることが大事だといいます。

比叡山

心に響く言葉を記すことで、心が洗われる

 * * *
 現代ではあらゆる情報が、スマートフォンに委ねられています。昔は、自分の頭でしっかり覚えていたはずの記念日や誕生日も、通知機能に任せきりになってしまってはいませんか。その点は、言葉も似ているでしょう。読めるのに書けない漢字が増えているのは、文字を打つようになった影響だと思います。

 もちろん「便利」という価値観だけに頼って生きていくのなら、言葉を手で綴る必要はないかもしれません。いまでは料理も、掃除も洗濯も、何がしかの機器に任せることができます。ただし、私は「(いつでも)できる」から「(いまは)やらない」という考え方に諸手を挙げて賛同はいたしません。

 私にとって自分自身の手、体を動かす行為は「一隅を照らす」ことにつながっているからです。一隅とは、真ん中ではなく隅、華やかな舞台の上ではなく、縁の下。急がば回れ。古来、培われてきた美しい態度です。感謝を込めた手紙を書くことは、お相手に気持ちを伝えるだけでなく、お書きになる皆さま自身の心を整えることにも役立つはずです。

美しい文字を綴る

美しい文字を綴る光永圓道さん

 千日回峰行を満行して、無動寺谷の明王堂で輪番を勤めていた頃、私は三千を超える信徒のかたがたに宛名を手書きした年賀状を差し上げておりました。それぞれのお名前を書いている最中、意識せずとも皆さまのお顔や声色が一瞬にしてよみがえるのは、とても幸せな時間です。あくまで一瞬だけですが、それが良いのです。

 三千という数字からは膨大な手間がイメージされるかもしれませんが、手紙をしたためることは「平常心是道」の心持ちで、私の日常に組み込まれております。平常心といいますと、普通は「焦らない」といった意味で捉えられますが、仏教的な考え方は少し違います。一生懸命に繰り返しているうちに、そのおこないが自然に、日常に溶け込んでいく状態をいいます。手紙を書くことだけでなく、善く生きようとする姿勢が、意識せずとも日常で表現されていけば、暮らしはそれだけで「道」になるのです。

比叡山

『山家学生式』について語る住職

【プロフィール】
覚性律庵 住職 光永圓道(47才)/1990年に得度受戒、2000年に延暦寺一山・大乗院住職に。2009年、千日回峰行を満行し、北嶺大行満大阿闍梨となる。現在、大乗院住職、覚性律庵住職。今年11月、仏門の修行と千日回峰行の荒行を経て到達した「心地良く生きるための作法」を説いた『比叡山大阿闍梨 心を掃除する』を出版。

撮影/黒石あみ

※女性セブン2023年1月1日号

比叡山

光永圓道大阿闍梨が心地よく生きるための作法を綴った著書が、好評発売中

関連記事

トピックス

左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
悠仁さまが学園祭にご参加、裏方として“不思議な飲み物”を販売 女性グループからの撮影リクエストにピースサイン、宮内庁関係者は“会いに行ける皇族化”を懸念 
女性セブン
衆院広島5区の支部長に選出された今井健仁氏にトラブル(ホームページより)
【スクープ】自民広島5区新候補、東大卒弁護士が「イカサマM&A事件」で8000万円賠償を命じられていた
週刊ポスト
V9伝説を振り返った長嶋茂雄さんのロングインタビューを再録
【長嶋茂雄さんロングインタビュー特別再録】永久不滅のV9伝説「あの頃は試合をしていても負ける気がしなかった。やっていた本人が言うんだから間違いないよ」
週刊ポスト
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏(=左。時事通信フォト)と望月衣塑子記者
山尾志桜里氏“公認取り消し問題”に望月衣塑子記者が国民民主党・玉木代表を猛批判「自分で出馬を誘っておいて、国民受けが良くないと即切り捨てる」
週刊ポスト
「〈ゆりかご〉出身の全員が、幸せを感じて生きられるのが理想です。」
「自分は捨てられたと思うのは簡単。でも…」赤ちゃんポスト第1号・宮津航一さん(21)が「ゆりかごは《子どもの捨て場所》じゃない」と思う“理由”
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談
ヨグマタ相川圭子 ヒマラヤ大聖者の人生相談【第24回】現在70歳。自分は、人に何かを与えられる存在だったのか…これから私にできることはありますか?
週刊ポスト
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
「週刊ポスト」本日発売! 食卓を汚染する「危ない輸入冷凍食品」の闇ほか
NEWSポストセブン