スポーツ

羽生結弦不在の全日本フィギュア 「過激ファンの暴走」なくなるも大会注目度が低迷で困惑の声

羽生結弦の初単独アイスショー「プロローグ」より(AFP=時事)

羽生結弦の”全日本不在”は数々の影響が(初単独アイスショー「プロローグ」より。AFP=時事)

 冬季五輪のフィギュアスケート男子で2連覇を果たし、2022年7月にプロに転向した羽生結弦の存在感が増している。大晦日のNHK『紅白歌合戦』にゲスト審査員として7年ぶりに出演することが発表され、12月28日には日本テレビ系報道番組『news every.』のスペシャル・メッセンジャーに就任することが発表された。一方、12月22日から開催された全日本フィギュアスケート選手権はというと、スター不在の影響は大きかった。

 12月25日に幕を閉じた全日本フィギュアスケート選手権。国内最高峰となる戦いは、フィギュアスケート人気の過熱とともにこれまで多くのドラマを生んできたが、2022年は少し違ったようだ。スポーツライターはこう語る。

「根強いスケートファンにとっては、坂本花織が順当に優勝し、難病を克服した三原舞依が銀、男子も宇野昌磨が優勝し、島田高志郎が銀という結果に納得感はありましたが、やはり毎年見られたようなドラマはなく、地味な印象は否めなかった。唯一話題になったのは、宇野選手が世界選手権代表の選考基準に疑問を呈した発言をしたことくらいです。

 スケート関係者やテレビ局が最も肩を落としたのは、人気も実力も急上昇中の三浦璃来と木原龍一の“りくりゅう”ペアがフライトの大幅遅延とロストバゲージで急遽、欠場となったこと。不運としか言いようがないのですが、日本ペアとして初めてグランプリ(GP)ファイナルを制した2人は今大会の目玉でもあったため、関係者たちは明らかな落ち込みようでした。アイスダンスで“レジェンド”の高橋大輔と村本哉中のペアが優勝し、高橋は全日本史上初の2種目制覇を達成しましたが、こちらはそこまで大きな話題にはなりませんでした。やはり、フィギュアスケート界は羽生結弦という大スターを失った影響が大きいと言わざるを得ません」

 平昌五輪フィギュアスケート男子で66年ぶりの2連覇を達成した羽生は2018年に国民栄誉賞を受賞。北京五輪後にプロに転向した羽生は、公式YouTubeチャンネルを開設し、2023年2月26日にはスケート史上初の東京ドーム公演を開催するなど話題に事欠かない。前出のスポーツライターが語る。

「これまで自ら発信するツールを持たなかった羽生さんが公式ツイッター、公式インスタグラムも開設し、バスソルトやバスタオルなど公演オフィシャルグッズも絶賛発売中で、活動の幅が広まったのは明らかです。

 全日本フィギュアで男子フリーの放送もあった12月25日に重なるように、羽生さんはTBSの『サンドウィッチマンのスポーツ・ネンイチ!』にVTR出演しており、そちらのほうが話題になっていました。プロに転向した選手が、全日本フィギュアの解説をしたり関連番組に出演したりすることはよくあるのですが、羽生さんの場合は自身の影響力を考慮して、プロ転向後は後輩たちのためにもあえて競技会とは距離を置くようにしているとも聞いています」

 その背景には、あまりにも大きすぎる影響力に対する苦慮もあったようだ。

「羽生さんが大会に出場する際は、会場全体が羽生さん中心になりすぎるため、他の選手にとっての影響は少なからずありました。中継に入るカメラやメディアは常に羽生さんを追いかけ、羽生さんが優勝を逃した大会でもスポーツ紙はじめほとんどの報道が優勝者ではなく羽生さんを中心に特集する。リンクでプレゼントの投げ込みが許されていた時には、羽生の演技後に大量のぬいぐるみの『プーさん』で埋めつくされることが話題になっていましたが、あれは次の滑る選手にとっては負担でもあった。公式練習中に羽生さんとの衝突事故や進路妨害があると大きく報じられ、ネット上で過激なファンたちが暴走して相手選手が大炎上するといったこともあるため、公式練習に固くなる若手選手も多かった。

 ただ、羽生さんのメディアへのふるまいや競技への姿勢などを同じ大会に出ることで生で見て学べるというメリットは非常に大きかった。“羽生不在”で注目度が下がるだけでなく、選手たちはそうした貴重な機会も失ったといえます。

 浅田真央さんに続き、羽生さんまでプロ転向となった中で、日本フィギュアスケート界が彼らに甘えて次のスター育成ができていなかったという批判も集めています。これまで大会のチケットは争奪戦になっていましたが、今回の全日本フィギュアは空席も目立っていたと指摘されています。そうした面でも、羽生不在の影響をまざまざと実感させられた大会でした」(同前)

関連キーワード

関連記事

トピックス

谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン