Twitterによる解雇は人権侵害にあたると提訴した元従業員たちと弁護士。提訴した原告の一人はエンジニアだった「マニュ」ことエマニュエル・コーネット(左)。彼は前職のグーグル勤務時代からSNSに投稿する風刺画でも知られていた(EPA=時事)
普通のユーザーはインプレッション数なんて気にしなくていい
確かに、それで経営が順調なら営利企業なのだから「好き好き」だろう。そのインフルエンサーやビジネス目的のユーザーも、法と規約を守る限りは好き好きだ。しかし先に書いた通り、Twitter社は巨額の赤字で存続すら危うかったと報じられている。
「それを救ったのがイーロン・マスクでしょう。今回のインプレッション数の可視化は英断と思いますよ。水増し連中のフォロワー数とインプレッション数、エンゲージメント率が明らかに矛盾していることが白日のもとにさらされたわけで。『俺はフォロワーが多いから1ツイートいくらでツイートしてやる』なんて言ってた奴も『フォロワーは多いけど誰も見てないから効果ない』って、みんながわかるようになったんですから」
いくつかのアカウントを教えてもらい確認してみたが、ある数万人のフォロワーを持つアカウントのインプレッション数が80とか300だったりする。
「よほど人気のユーザーでもない限りフォロワーの10%から反応があれば上出来なんて言いますけど、それにしたってひどいもんです」
確かに。芸能人や界隈で知られるインフルエンサーでも、数十万人のフォロワーを持つにも関わらずインプレッション数が3000とか5000というアカウントが散見された。
これについて、旧知のIT情報誌の編集者に話を聞く。
「全員が買ってるとは言いませんが、ミュート(相手の通知を切ること)のフォロワーばかりだと、フォロワーが多いのにインプレッション数やエンゲージメント率が極端に少なかったり低かったりすることはあります。たとえばフォロワーが多いにインプレッション数が50とか100ばかりの場合は、フォロワーを買っているケースだけではなく、フォロワーの大半からミュートされているケースもあるでしょう。アイドル時代のフォロワーが惰性でフォローしてたり死垢(使わないまま放置のアカウント)だったりでその数、という元アイドルとか。まあ、Twitterも日本語版のリリースから10年以上経ってますからね」
もちろん、とくにTwitter初期、相互フォローが当たり前の時代に相互フォローで万単位のフォロワーを得た場合にもあり得るケースで、決して「フォロワーを買った」とは一概にはいえない。ミュートだけでなくフォロワーがTwitterをやめてしまったアカウントが大量に「ただのフォロー」状態の場合もある。
「あとは『シャドウバン』の可能性もあります。誰からもツイートやアカウントが見えなくなれば反応がないのは当然です。もっとも、マスクの買収以降は減ったみたいですが」
この「シャドウバン」とは、運営が悪質と判断したアカウントの投稿を他のユーザーのタイムラインに表示されなくなったり、検索結果から除かれたりする制限をかけた状態のことを指す。以前のTwitter社は「シャドウバンを過去に行ったことはない」と発信していたが、ユーザーはたびたび、シャドウバン状態を体験している。これはペナルティのようなもので一時的に、あるいは永続的に自分のアカウントやツイートが周りから見えなくなってしまう。これまでTwitter社およびTwitterJPはこのペナルティの存在を否定してきたが、基準が分かりづらい上に恣意的で理不尽、また明らかにシャドウバンが存在するのに否定するのかと不評を買っていたが、シャドウバンされているかどうか理由も含めて分かるようにするとマスク氏が発信していた。ちなみにマスク氏の買収以降、当のTwitterJPのアカウントがシャドウバン状態となったことが界隈の話題となった。