地下アイドル、ガールズバー店員も経験している小川さん
「健康でいてくれればいい、と思ったけど……」
自転車ごと5メートル吹っ飛ばされ、鎖骨や腰、鼻など10か所以上を骨折。搬送先の病院で「もって1時間」と宣告された。なんとか一命を取り留めるも、1週間ほど意識不明の重体だったという。生死の境を彷徨う娘を目の当たりにした母・千鶴子さんは、これまでの娘への接し方を反省していた。
「娘が私を嫌いになって、家を出て行ったのは、私の期待が重すぎたからじゃないか。私の大きな期待が、結果的には今回の事故を招いたんじゃないか……。そんなことをグルグルと考え、ものすごく落ち込みましたし、反省しました。そして考えを改めたんです。これからは、娘には何も期待しない。もちろん否定もしない。ちゃんと健康で家に帰ってきてくれさえすればいいって。そう思ったのですが、AVに出たと聞いたときは信じられない思いでしたし、できることなら辞めてほしかったです。でも、それも私の勝手な期待だなって、今では思っています」(母・千鶴子)
現在、小川はセクシー女優として活動しながら、平日は会社員としても働く日々を送る。
「女優の仕事は、どんなにハードな内容でも断りませんでした。一番忙しいときは月収100万円ほどありましたが、長続きはしなかった。もちろん10年以上も第一線で活躍する女優さんもいますが、ほんの一握りです。やはり私はセクシー女優としてもひとつ頭を飛び出すことはできなかった。そう思うと悲しいですが、それでも生きていくには仕事をしなければいけないので」
小川にとって初めての就職。母親の知り合いに誘われた会社だった。「昼職には、まだやり甲斐は見つけられません」と苦笑するが、一方でこうも思っている。
「母親がすごい安心してくれたので、それが一番大きい。これまで心配ばかりさせた母親を安心させてあげたいし、私にだって正社員は務まるんだってことを見せてあげたいですね」
その言葉をそのまま伝えると、千鶴子さんは「えっ! あの子、そんなこと言ったんですか? 私、あの子にずっと嫌われてると思ってたから……」と涙を流して喜んだ。
「ようやくあの子と心が通じ合えたような気がします。AVの仕事は今も続けているみたいですが、いつか普通に結婚して普通に子供を産んで当たり前の幸せを噛み締める暮らしをしてほしいです」
普通で、当たり前の幸せとは何か? もう期待しないと言いつつ、やはり子供には“普通の幸せ”を願ってしまう。そんな母のアンビバレントな願いと、ときに反抗しつつも母親に認めてもらいたいと願う娘の思いが交差した瞬間だった。