おしゃれよりも機能性重視だった
【美的センス】生涯にわたって「質素倹約」を貫いた家康。身に着けるものも、豪華絢爛なものよりシンプルなものを好んだ
慶長16(1611)年に、スペイン国王フェリペ3世からスペイン船の海難救助のお礼として贈られた(重要文化財)時事通信フォト
「家康は見た目の美しさよりも実用性を重視したと考えられる」と本郷さんは話す。
「彼は白い天守閣を好みましたが、白が好きだったというだけでなく、黒い城だと漆塗りになり、コストがかかる。白い漆喰の城はコストが抑えられるため安上がりで済むという理由から使っていたのかもしれません。防御を考えた城づくりに重きを置いていたのも、実用主義の家康らしい発想です」
武将にとって鎧兜は、一世一代の晴れ装束であり、見た目に艶やかな鎧兜を身に着けて戦に赴くのが美徳とされていた。
「おしゃれよりも、丈夫で動きやすいか否か、家康は何よりも機能性を重視していたようです」
その一方で、メガネや時計など西洋のものも愛用していた。
体調を整えてこそ戦ができる、と体に気を使った
【健康】家康は当代きっての健康マニアとして知られている。バランスのよい食生活と運動には気を配っていた
家康はてんぷらが好きで、死因はてんぷらの食べすぎという説もあるが、ふだんは粗食を好んでいたといわれている。主食は麦飯。白米に比べてビタミンやミネラルが豊富で安く手に入るという、質素倹約を好む家康らしい理由で麦飯を食べていたという。
晩年まで鷹狩りにいそしみ、神奈川県平塚、東京都葛飾、千葉県東金などで楽しんでいたという(時事通信フォト)
意外なことに、スポーツマンでもあったという。
「家康は鷹狩りが好きでした。健康のためというのもありますが、どちらかといえば戦のために鷹狩りで軍事演習のようなことをしていたようです。水泳や馬術も生涯欠かしませんでした。三方ヶ原の戦いで敗北を期し、殺されるという恐怖を覚え、脱糞しながらも逃げたことがトラウマになり、ピンチのときに泳いだり、馬で一目散に逃げられるようにトレーニングを続けていたようです」
そのほか、家康は薬に関する豊富な知識を持っており、中国の薬学書を読み、自ら薬の調合を行って、漢方薬を処方し、日常的に服用していたという。
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2023年1月19・26日号