大相撲初場所は、大関・貴景勝が星ひとつの差で優勝争いのトップを走っていた平幕・阿武咲を13日目の結びの一番で破り、平幕の琴勝峰も含めた3人が3敗で並んだ。4敗にも小結・霧馬山、平幕の大栄翔、東龍の3人がおり、大混戦の様相を呈している。両国国技館は平日も満員御礼の垂れ幕が下りる盛況ぶりだが、そこではこれまでにない「異変」も生じていた。
横綱・照ノ富士が初日から休場し、ひとり大関となった貴景勝が序盤から星を落とすなど、今場所も本命なき優勝争いが続いている。そんななか、12日目の国技館の売店で、こんな場面を目にした。
「すみません、たった今売り切れちゃいました……」
売店の担当者が申し訳なさそうに頭を下げた相手は、今場所から十両に戻って相撲を取っている元大関の朝乃山の応援タオルを購入しようとした男性ファンだった――。
朝乃山は2021年の5月場所中に協会の新型コロナウイルス対応ガイドライン違反が発覚して、6場所出場停止の処分を受けた。番付は大関から三段目まで降下したが、昨年の7月場所で復帰すると、4場所目で十両に返り咲いた。今場所は初日から大関経験者の貫禄を見せつけて白星が続き、12勝1敗。14日目にも十両優勝が決まる。そんな朝乃山に対し、場内では日ごとに掲げられる応援タオルの数が増えていった。
国技館の売店では力士の四股名が入ったグッズが販売されているが、これは関取だけに認められていること。幕下以下に落ちていた間、朝乃山のグッズはお蔵入りしていたわけだが、「十両に復帰した今場所から店頭に並ぶことになった」(売り場担当者)という。
店頭には昨年引退した勢、魁聖、千代大龍も含めた55人の力士の応援タオルが販売されている。こうしたグッズは「基本的に幕内に昇進した時に製作するため、十両でグッズがあるのは幕内経験がある力士に限られる」(売り場担当者)のだという。そのため、十両力士のタオルは朝乃山はじめ、照強、志摩ノ海、炎鵬など10人に限られ、売店に掲げられたリストの最後に〈十両力士は在庫のある力士のみ販売しております〉と書かれている。