未婚のアル・カピエロさんは施設で運命の人に出会った(撮影/Brian Everett Francis)

未婚のアル・カピエロさんは施設で運命の人に出会った(撮影/Brian Everett Francis)

高齢者にとっては、社交的な生活をすることこそが重要

 それでは、実際にヘブライ・ホームの入居者はどう感じているのか。

 10年ほど前から入居するアル・カピエロさん(73)は、「この施設が大好き」と言う。未婚のアルさんだが、ホームで出会った女性、グローリア・ダンカンさん(故人)と結婚を約束していた。

「7年前、施設で開催されたシニア・プロムにグローリアを誘ったのがきっかけです。それまでは数回言葉を交わしたくらいだったのだが、プロムでは最高に楽しい時間を過ごせた。それからは離れられない仲になり、部屋を行き来して一緒に夜を過ごし、肉体関係もありました」(アルさん)

 グローリアさんが病気で入院してからはお見舞いに訪ねたという。コロナ禍以降は会うことも難しかったが、カフェテリアから彼女の好きなものを持って病室に通った。

「最後にグローリアに会ったのは2022年3月19日。亡くなる5日前でした。その日は彼女の誕生日で、3時間かそれ以上を病室で一緒に過ごし、『また来るよ』と言って別れました。退院したら結婚する予定で、すでにプロポーズは済んでいて、彼女に『イエス』の返事ももらっていたんです」(アルさん)

 アルさんは彼女を弔うために現在も喪に服している。

 入居して4年ほどというアイリーン・ネーグルさんは、施設のポリシーを知らずに入所した。

「今は誰とも付き合っていないけど、ここの生活は好きです。誰か素敵な人と出会う機会があればお付き合いするかもしれないけど、わからない。この歳になると、座ってお話しして、人と会うだけで十分。20歳の時とは違うから(笑)。この施設では色々な催しがあって、いつも私たちをアクティブでいさせてくれる。入居してから仲の良い友達もできました」

 以前はアパートに一人暮らしだったというアイリーンさん。恋人はいないが、施設のポリシーを気に入っているという。セックス・ポリシーの肝はこの点にある、とCEOのレインゴールド氏。

「高齢者にとっては、社交的な生活をすることこそが重要。孤独は人を死に追いやります。日本では高齢者が『家族の重荷になりたくない』と自ら命を断つこともあると聞きます。

 これは悲惨なこと。世界のどこでも、高齢者が社交的に生活を楽しむ仕組みを作らなければいけません。我々のG-Dateでは参加者がたとえカップルにならなくても、一緒に趣味を楽しむ友達が新しくできれば、その友達に会うことが毎日の楽しみになる。それがこのポリシーの真骨頂なのです」

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