野田毅・元自民党税調会長(時事通信フォト)
こうした安倍氏の証言について、回顧録で財政再建派の筆頭に名指しされた野田毅・元自民党税調会長の話を聞いた。
「財務省の手先のように言われているが、私が財務省を指導しているんだよ。消費税に反対する人たちは、『経済』を重視すると主張しています。経済あっての財政だと。
しかし財政は経済立て直しのツールです。景気立て直しのために財政出動をドーンと行なって景気を刺激する。それなりに効くが、せいぜい2、3年。10年以上の成長を目指すにはそれでは駄目です。財政出動ばかりでは財政が破綻する。経済が破綻するということです。これでは逆効果であり、国を良くするという目的に反している。
必要なのは、バランスの取れた税体系。これが国家財政のために必要であり、それが経済成長にもつながるという考えです。菅直人さんなど民主党の方たちは、財政について全くわかっていなかったが、財務大臣になって勉強され、総理になってさらに財政への理解を深めた。その過程で財務省は注射をしたわけではなく、レクを行なったということでしょう。
安倍元首相はそもそも敵・味方の発想が強いのではないでしょうか。日本は役人に踊らされていると。その役人の中心が財務省であると。果たしてそうでしょうか。財務省にそこまでの力はありません。ましてや政権を潰すなどできるわけがないし、財務省はそんなことをしようと考えていないでしょう。
もちろん財務省もあるべき姿というものを想定しており、そのために総理、政府に理解いただくため、ご説明を果たしてはいると思います」
※週刊ポスト2023年3月3日号