「家宝だ」という、岡田准一が叩き折った木刀を持つ森脇氏
武術の目的は「内面を鍛えて身を守る」こと
達人たちは無骨で喋りが得意ではないという勝手なイメージを持っていたが、『明鏡止水』でそのイメージは覆された。数多くの指導をしているので、よく考えてみれば当たり前なのだが、理路整然な語り口は説得力抜群だ。
「体を通して出てくる言葉はすごく強い。嘘がないんです。頭でひねり出したものではない。もう血と汗ですよね。それこそ『千日をもって鍛となし、万日をもって錬とする』みたいな生き方の方々が、もはや無意識レベルに落とし込んで言葉として出ているので、本物の生きた重い言葉なんですよね。だから理路整然でも理屈っぽくない。“身体知能”という言葉がありますけど、そういう知性なんだと思いますね。
現代の格闘技は、古典的な武術よりも進化しているところは間違いなくある。でもどちらが強いか、みたいな議論は不毛なんです。そもそも出発点も目的も全く違いますから。格闘技や競技武道はチャンピオンを目指すのが目的ですが、古武術は自分に勝つ、死なずに生きて返ってくることが目的なんです。
日野武道研究所の日野晃先生が『殺気というのは違和感』とおっしゃっていましたがそれが最たるものですよね。生き物としての生まれながらの力を取り戻す手段。内面で感じ取って危険を避ける。その内面を鍛えるために体を鍛えるという。身を守るということにおいては、武術のほうが歴史があるわけなんです。
3月1日放送の『護身の拳』では、柔術の回で『声を出して逃げるのが一番だけど、あえて何かを選べと言われたらブラジリアン柔術を勧める』とおっしゃっていた岡田さんに改めて護身哲学を語ってもらっています」