「岡田さんと古武術の達人たちとのコラボレーションで何かが起きる」と思ってオファーしたという森脇雅人氏
「『明鏡止水』が続くかどうかは今クールの反応次第」
昨今、NHKは若者の視聴者層拡大に力を入れていると聞く。『明鏡止水』が放送されている枠もまさにその役割を担っている。だから「NHK+」の見逃し配信の閲覧数なども大きな評価基準になっているという。
「番組に出てくださった護道の廣木(道心)先生に言わせると『明鏡止水は、1回じゃわかりません、何度見直しても発見があります』と。そういう意味では配信時代に向いているのかなと思います。短い時間に情報を詰め込みまくっているわけですけど、それを配信で味わい直していただくみたいな使い方をしていただければ嬉しいなと思います。
2月22日に放送する『円の理』では、流派でくくるのではなく『円』を使って戦う武術を集めました。そういう切り口なら無限にテーマは見つかるだろうというひとつの実験ですね。『明鏡止水』が続くかどうかは今クールの反応次第と言われています。いまのところご好評をいただいているので、何らかの形で当然継続するだろうとは思っているんですけど、約束がないのが編成の世界なので。もちろん、僕らはやるつもりでいますけどね」
そんな『明鏡止水』の将来の展望を森脇は力強く語る。
「私個人の思いでいえば、『明鏡止水』をベースにして、放送コンテンツだけではなく、講座のように、実際の武術に触れることができる場を提供するようなことに広げられればいいですね。
あと、大きな夢としては武術家の先生方による時代劇を作ってみたい。時代劇で育てられたような世代なので、今、見る機会が少なくなって寂しいんですよ。だから単なる時代劇の“復興”ではなく、かつてはあり得ないような発想の殺陣を本物の達人の方とコラボレーションすることによって、海外の映画大国に負けないものが生み出せないかって。それを岡田准一さんと一緒にやれたら最高ですね」
(了。前編から読む)
【プロフィール】森脇雅人(もりわき・まさと)/1993年NHK入局。最初の勤務地は福岡。1999年以来NHK合気道部に所属している。2018年からNHKエデュケーショナルに勤務。『明鏡止水~武のKAMIWAZA~』を企画し、統括プロデューサーのひとりを務める。
◆取材・文 てれびのスキマ/1978年生まれ。ライター。戸部田誠の名義での著書に『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『タモリ学』(イーストプレス)、『芸能界誕生』(新潮新書)、『史上最大の木曜日 クイズっ子たちの青春記1980-1989』(双葉社)など。