(撮影/横田紋子)

役者を志すきっかけは「柄本明の舞台を観たこと」だった(撮影/横田紋子)

「柄本さんと一緒にやってみたい」

──お話を伺っていると、岡部さん、「目標がない」「やる気が持てない」という若者の気持ちがよく理解できるのでは……?

岡部:本当によく分かります(笑)。でもせっかく地元を出て、東京に来たんだからと、俳優の柄本明さんが座長を務める「劇団東京乾電池」の団員オーディションを受けました。

──「劇団東京乾電池」! 大御所の劇団を受けられたんですね。

岡部:ちょうど大阪で柄本さんのお芝居を観劇していて、演技に感動したんですよ。それまで舞台で芝居をするというのは、声を高らかに張り上げて観客を感動させるものだと思っていました。でも柄本さんの芝居は全然違った。小さな声で、セリフの内容も何を言っているのか聞こえないところさえあるのに、引き込まれるものがあるんですよ。すごく面白くて、刺激を受けた。この人と一緒にやってみたいという気持ちが湧いて、オーディションを申し込みました。あ、劇団員の費用が他よりも安かったということも受けた理由ですけどね(笑)。

──テレビではドラマ『走れ公務員!』(フジテレビ系列・1998年)から、俳優人生がスタートされました。舞台、映画、ドラマと合わせて200本近く、バイプレイヤーとしてマラソンのように駆け抜けていらっしゃいますが、そこにどんなエネルギーがあったのでしょうか?

岡部:エネルギー……と言っていいんですかね。僕、芸能界に入ったときからずっと、「面白い」ということに、執着心みたいなものがあります。それがエネルギーだったかもしれません。「もっと面白くならなあかんで」と念仏みたいに毎日唱えてました(笑)。自分よりも面白いと思う人にお会いするたびに、その人に憧れて。

──その「面白さ」への崇拝みたいなものが、岡部さんに上昇志向を持たせていましたか?

岡部:上昇志向……ひょっとしたら30代後半くらいまでは、抽象的にあったかもしれません。周囲にも「もっといい役をもらおう!」「上に行こう!」という意志のある人間もいましたし。

 あとは焦りもありました。地元からの「このままやったらどうするの?」「売れないとあかんで」みたいな声も聞こえてきましたから。でもそんな焦りが消えた時期があったんですよ。そしたら数年後かな。昨年放送の『あなたのブツがここに』(NHK総合)と『エルピス』が巡ってきたんですよね。

 * * *
 俳優・岡部たかしがデビュー前について話すのは、これがほぼ初めてだという。25年以上、いわゆる下積み生活を続けてきた男性の話はやはり面白い。

第2回へ続く】

(撮影/横田紋子)

「焦りが消えたら役が巡ってきた」と語る(撮影/横田紋子)

【プロフィール】岡部たかし(おかべ・たかし)/1972年6月22日生まれ。和歌山県出身。俳優を志して上京後、劇団東京乾電池に所属。その後劇団を退団、数多くのドラマ、映画、舞台に出演を続けている。2022年出演の『エルピス』(関西テレビ、フジテレビ系列)、NHK夜ドラ『あなたのブツが、ここに』での一癖ある役で注目される。自身が立ち上げた演劇ユニット『切実』では演出も担当。

(c)NTV

『リバーサルオーケストラ』で元天才ヴァイオリニスト谷岡初音を演じる門脇麦(c)NTV

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谷岡初音(門脇麦)の妹(恒松祐里)とともにオケを支える(c)NTV

◆取材・文/小林久乃

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