国内

発達障害の人とよい関係を築くために 理解しておくべき「脳の特性」と適切な対応

発達障害の人

発達障害の人の「脳の特性」とは?

 失礼なことを悪気なく言う、約束を守れない、感情の起伏が激しい──。近年、こうした言動に脳の機能の特性が影響していると考えられるようになってきた。『発達障害の人が見ている世界』(アスコム)の著者で精神科医の岩瀬利郎さんはこう話す。

「脳の機能の特性にはさまざまあり、注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)などが挙げられます。これらを総称して“発達障害(神経発達症)”といいます」(岩瀬さん・以下同)

 厚生労働省が2018年に公表した「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」によると、医師から発達障害と診断された人は約48万人いると推計され、診断を受けていない人も含めると、800万人以上いるという試算もある。

「発達障害の人は、人の気持ちを想像する眼窩前頭皮質、感情表現を担う大脳辺縁系、行動を司る前頭葉、共感や自己意識に関係する島皮質の働きが弱い傾向にあります」

 これらはコミュニケーションに深くかかわる部分だ。向精神薬などで改善する人もいるが、本人と周囲の人の理解や適切な対応によって、コミュニケーションがうまくいくことも少なくない。

ケース2

ケース2

遅刻や不注意が多いADHDの特性

 例えば、仕事を頼んでもなかなか遂行できないというケースもあるだろう。“依頼や約束が守れない”といった傾向は、ADHDの人が陥りがちな状況だと岩瀬さんは言う。

「ADHDの人は注意力が持続しにくいので、細かい作業や同時進行が必要な仕事が苦手。指示を最後まで聞きにくい傾向もあります。遅刻や忘れもの、失敗が目立つのも特徴です」

 ADHDの人への対応としては、メモを活用するなどして、指示を忘れない仕組みを周囲が作ることが大切だ。本人だけでは、メモの存在自体を忘れることもあるからだ。

「本人の意識や努力だけでの改善はなかなか困難です。周囲の人も、声をかける、複数の仕事を一度に頼まないなどサポートすることが大切です」

 ADHDの特性としては、絶えず体を動かす、結果を考えずに行動する、話があちこちに飛ぶ、感情の制御が苦手といった事象も見られる。

 こういった特性のため、幼い頃から失敗が多い。他人から認められる機会が少ないため、自己肯定感が低く、“また失敗するかも”といった不安を抱え、自信を喪失している人も多い。周囲の人は彼らの脳の特性と、それによる経験も含めて理解して対応すると、よい関係が築きやすい。

空気を読むのが苦手なASDの特性

 発達障害のうちADHDと並んで多いのは、ASDだ。

「ASDの人は、相手の言葉や表情を想像する力が弱いため、空気を読むのが苦手な傾向にあります。ですから、周囲の人も“察してほしい”と思わず、こちらの意思を論理的に、かつはっきり伝えるなどの対応が必要です」

関連記事

トピックス

割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
高市首相の発言で中国がエスカレート(時事通信フォト)
【中国軍機がレーダー照射も】高市発言で中国がエスカレート アメリカのスタンスは? 「曖昧戦略は終焉」「日米台で連携強化」の指摘も
NEWSポストセブン
テレビ復帰は困難との見方も強い国分太一(時事通信フォト)
元TOKIO・国分太一、地上波復帰は困難でもキャンプ趣味を活かしてYouTubeで復帰するシナリオも 「参戦すればキャンプYouTuberの人気の構図が一変する可能性」
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン