ライフ

藤井聡太が6冠制覇も“年内8冠”はあるのか 最大の敵は「ハードスケジュール」

“年内8冠”への期待も(時事通信フォト)

“年内8冠”への期待も?(時事通信フォト)

 3月19日の棋王戦第4局では、挑戦者の藤井聡太竜王(20)が渡辺明棋王(38)に勝利し、3勝1敗で棋王のタイトルを奪取。史上最年少6冠という快挙を達成した。3月12日には羽生善治九段(52)の挑戦を退けて王将位を防衛したばかり。その前週には順位戦A級の挑戦者決定プレーオフで広瀬章人八段(36)に勝利して、渡辺名人への挑戦権を手にするなど、破竹の勢いだ。

 早くも史上初となる全タイトル制覇の8冠独占の“年内実現”を期待する声も高まっている(1996年に羽生九段が全タイトル制覇した時は「7冠」だった)。年内の8冠独占には、4月からの名人戦を制し、保持するタイトルを防衛したうえで10月からの王座戦でタイトル奪取を果たす必要があるが、今の強さを見れば期待感が高まるのも無理はない。

 将棋ライターの松本博文氏はこう解説する。

「棋王戦も制した藤井竜王は、これまでタイトル戦番勝負に13回登場してそのすべてを制しています。常識外れの強さで、名人戦にも勝利して最年少名人、最年少7冠を達成する可能性はかなり高いのではないか。実力的には、8冠を独占してもおかしくありません。年内8冠への最大の敵はハードスケジュールでしょう。タイトルを複数保持するような超一流棋士は対局が過密日程になる。藤井竜王がそこをどう乗り越えていくかが楽しみです」

トーナメント方式という壁

 一方で、最後に残る可能性のある王座のタイトルについては、挑戦権を得るまでの困難もある。藤井竜王はトーナメント方式で挑戦者を決める王座戦においては、初参加の2018年にベスト4まで進んだのが最高成績で、タイトル保持者となって予選免除で決定トーナメントから参加した2021年と2022年は1回戦で敗退している。業界関係者はこう話す。

「複数回の対局で結果が出る番勝負やリーグ戦で藤井竜王を上回るのは至難の業ですが、トーナメントは一発勝負。王座への挑戦権を得るには1回戦、2回戦、準決勝、決勝と4連勝が必要になります。今年度の藤井竜王の勝率は8割超で、相手もトップ棋士というなかでは驚異的な水準ですが、勝率8割でも2連勝の確率は64%、4連勝となれば約40%になる。挑戦権を得られる確率は5割を切るという計算です。

 先日決着した棋王戦もトーナメント方式で挑戦権を決めますが、敗者復活がある。藤井竜王も今回の棋王戦では準決勝で敗れた後に敗者復活から勝ち上がって挑戦権を得ている。複数回のチャンスがあれば、藤井竜王がトップに立つ可能性が高いということでしょう。一方、1回負けたら終わりのトーナメントだと、流石の藤井竜王でも勝ち上がるのは大変です」

 挑戦権を得たとしても待ち構えるのは現在王座戦4連覇中で次回は名誉王座の資格獲得が懸かる永瀬拓矢王座(30)だが、タイトル戦自体は藤井竜王が無類の強さを誇る番勝負になる。別の観戦記者もこう言う。

「やはり、8冠に向けての高い壁は挑戦権を得るまでの王座戦のトーナメントでしょうね。将棋は先手と後手では後手のほうが少しだけ不利になる。番勝負なら先後は交互になりますが、トーナメントだと毎回振り駒で決めるので強い相手に後手ばかり続く可能性もあるわけです」

 もちろん、数々の難局を乗り越えてここまで実績を積み重ねてきたのは並大抵のことではない。「“8冠は確実”といった声もあるなかで、そこまで甘くはないだろうという話。保持するタイトルの防衛は盤石に近いだろうから、8冠挑戦のチャンスは何度もあるかもしれない。王座戦の挑戦権さえ獲得すれば、タイトル独占の可能性はグッと上がるのではないか」(前出・業界関係者)との見方もある。藤井竜王の対局から、目が離せない日々がまだまだ続きそうだ。

※週刊ポスト2023年3月31日号

銀色の杯を抱える(写真/JMPA)

銀色の杯を抱える棋聖獲得時(写真/JMPA)

破竹の勢い(写真は2021年)

破竹の勢い(写真は2021年)

現在19歳(写真/JMPA)

現在20歳(写真/JMPA)

関連記事

トピックス

維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
《高市首相の”台湾有事発言”で続く緊張》中国なしでも日本はやっていける? 元家電メーカー技術者「中国製なしなんて無理」「そもそも日本人が日本製を追いつめた」
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
NEWSポストセブン