現在は水道橋の「闘魂SHOP」で働く敬子さん
「ウチの親分は懲役に行ってたはずだから」
悪戯そうな笑みを浮かべながらに訊いてきた。力道山、大野伴睦とくれば、やはり大物なのだろう。
「児玉誉士夫?」
「違う」
「田岡一雄?」
「違う」
政財界の黒幕でもなければ、山口組三代目でもない。となれば思いつくのは、稲川角二や阿部重作といった、大物やくざであるが、いずれも違うという。
「安藤昇?」
そう言うと彼は「ウチの親分はこのとき、ちょうど懲役に行ってたはずだから、披露宴に招かれてすらない」と言って大笑いした。
「そろそろ教えて下さい」と言うと、彼は「仕方ないな」と目配せしてこう答えた。
「敬子さん」
「え?」
「新婦ですよ、田中敬子」
理解しかねた。一体どういうことだろう。
「新婦とはJALの同期でね」
「あ!」