国内

【永遠の化学物質PFAS問題・後編】調査が31都道府県にとどまる理由、「国と自治体の押し付け合い」の現状

(写真/GettyImages)

各地で次々とPFAS汚染の実態が明らかに(写真/GettyImages)

 女性セブン2023年3月2日発売号では、発がん性が疑われる化学物質「PFAS」が全国各地で指針値を超えている状況についてレポートした。しかし、依然、国の対応は遅い。いったい、それはなぜなのか。女性セブンがPFAS問題に迫る専門家らに改めて話を聞いた。【前後編の後編。前編から読む

 日本でPFASの問題が大きく報じられることになった発端のひとつは、環境省が今年1月14日、2021年度の全国調査の結果を発表したことにある。31都道府県、1133地点で調査が行われ、13都府県、81地点の河川や地下水などが暫定指針値を超えていたことが明らかになり、多くの新聞が報じることとなった。

 しかし、なぜ31都道府県にとどまり、全国で調査を行っていないのだろうか。環境省に尋ねた。

「2020年度までの調査は環境省として行いましたが、それ以降は『要監視項目』に指定し、各自治体が必要や状況に応じて調査をすることになりました。そのため2021年度分は自治体で測定した結果を取りまとめて、公表したものです」(環境省の水・大気環境局水環境課担当者・以下同)

 国が自治体に調査させているわけだが、環境省への結果報告も義務ではないので罰則もない。各自治体で独自調査をしているが、環境省に報告していない場合もあるようだ。これでは国が全国の情報を把握するのは難しい。国は今後、どんな対応を考えているのか。

「縦割り行政になってしまいますが、自治体に調査をお願いしていくことになる。環境省が行う調査では、せいぜい100地点程度しかできませんが、都道府県の調査なら1000地点を超えるデータが集まる。今後とも自治体に働きかけていく予定です」

 PFAS問題に詳しい、京都大学大学院医学研究科准教授の原田浩二さんはこう指摘する。

「現状は、国と自治体がお互いに対応を押しつけ合っている状態といえます。自治体の調査を支援するため、汚染源にかかわる情報を集約したり、政府が所管する施設を拠点に調査を行うなど国ができることはたくさんあるはずです」

 測定地点についても問題がある。調査結果を見ると河川は最寄りの橋が記載されているものが多いが、井戸の場合は「地下水」としか書かれていない。どの地域の地下水が危険なのか、私たち住民にとって肝心な情報が明らかになっていないのだ。環境省にぶつけると、こんな回答が返ってきた。

「地下水は、個人のかたの井戸を使用して計測しているケースもあるので、プライバシーに配慮して具体的な地点名というのは出せないというのが理由です。

 しかし、“市町村レベルの情報もないのはどうなのか”という声もありまして、それに対応した追加情報を別途、ホームページに掲載しております」

関連キーワード

関連記事

トピックス

東京・渋谷区にある超名門・慶應義塾幼稚舎
《続報スクープ》慶應幼稚舎のお受験に巣くう“入学ブローカー”と教員のいびつな関係 有名IT企業社長の子供も斡旋か
女性セブン
加古川女児殺害事件から17年が経過した(時事通信フォト、2007年)
《未解決だった加古川小2女児殺害事件に動きが》「わずか1~2分の間にナイフで…」服役中の男(45)が関与か 手がかりは「少女のダイイングメッセージ」
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告
【ススキノ事件公判】電気が流れるナイフに、赤と黒の革製の打具 殺害の3年前に田村瑠奈被告(30)が購入していたSMグッズの名前
NEWSポストセブン
芸能事務所所属を発表した元ウェザーニュースキャスター檜山沙耶(Instagramより)
《私生活はコスプレ好き》元ウェザーニュースキャスター檜山沙耶、「芸能事務所所属」を発表 「アニメの裏側」語る番組も人気
NEWSポストセブン
マイファス・Hiroと山本舞香の結婚は順調…?(Instagramより)
《気が強い同士?嫁姑関係は…》山本舞香にとって森昌子は「最高の姑」 「孫の面倒は見ない」“のれん分けタイプ”の姑なら結婚生活は順風満帆か
NEWSポストセブン
【山口組が抱える“空き家問題”】機関紙で明かされた「総本部」の栄枯盛衰 テニスコートにゴルフネット、食堂、警察犬もいたが、現在は5年の使用制限で「復元させないといけない」状況
【山口組が抱える“空き家問題”】機関紙で明かされた「総本部」の栄枯盛衰 テニスコートにゴルフネット、食堂、警察犬もいたが、現在は5年の使用制限で「復元させないといけない」状況
NEWSポストセブン
(ままるんのXより)
《51才「ままるん」登場》藤田ニコルの実母が「恋愛リアリティショーに出演で本気の恋」 名前は「パチゆみ」
NEWSポストセブン
千葉真一さんのマネジメントを手がけていた事務所社長が急死していた
《自宅で遺体発見》千葉真一さん事務所社長が「急死」周囲に語っていた映画と千葉さんへの思い
NEWSポストセブン
井上晴美が語る、デビュー時から連続ドラマなどで活躍してきた思い出とは
《元『桜っ子クラブ』の井上晴美》人気絶頂の25歳でスキンヘッド写真集を決意した意外な理由「“髪の毛を剃ってないほうがよかった”という人もいましたが…」
NEWSポストセブン
あごひげを生やしワイルドな姿の大野智
《ワイルド姿キャッチ》嵐リーダー・大野智、宮古島で自由な生活を謳歌 左上腕や両肩に自らデザインしたタトゥー、過去には「クビになってもいいから墨を入れる」と話していたことも 
女性セブン
亡くなったシレール・ゴランさん(イスラエル大使館の公式Xより)
《性暴力の叫び声》ハマスの音楽フェス襲撃から生還した20代女性が迎えていた最悪の結末「魂はすでに死んでいた…」海外メディアが報道
NEWSポストセブン
最近になってSNSの収益化も始まったというビオーレ名古屋(Viore Nagoya)」
《収益化も成功》“カワイイSNS”で大人気『ビオーレ名古屋』が懸念するアスリート盗撮問題とファンのモラル「“ど素人”と言われて……」「みなさんのマナーにかかっています」
NEWSポストセブン