ライフ

コロナ以前は年間約100人が感染したマラリア 免疫がない日本人にとって治療の遅れは致命的

マラリアの特徴とは(イラスト/斉藤ヨーコ)

マラリアの特徴とは(イラスト/斉藤ヨーコ)

 人間は様々な感染症とともに生きていかなければならない。だからこそ、ウイルスや菌についてもっと知っておきたい──。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、マラリアについてお届けする。

 * * *
 蚊が病原体を媒介する感染症の中でも多くの犠牲者を出しているのが、マラリアです。

 日本では現在はマラリアの流行はありませんが、海外渡航者による発症の報告はあり、コロナ以前は年間約100人が海外で感染、帰国後に発症していました。

 世界的には熱帯・亜熱帯地域で流行し、死亡者の多くはサハラ以南のアフリカの5歳未満の子供たちです。また、東南アジアや南アジア、パプアニューギニアやソロモンなどの南太平洋諸島、中南米などでも多くの発生があります。

 これらの流行地に育ち、何度も罹って免疫を得ている場合とは異なり、日本人はマラリアの免疫を全く持たないため、感染すると診断や治療の遅れで致命的となることもあります。

 原体はマラリア原虫で、人はこのマラリア原虫を持つハマダラカに吸血されて感染します。マラリア原虫が体内に侵入すると、好んで赤血球に寄生し無性生殖(多数分裂)で増え、次々と赤血球を破壊していくのです。

 マラリアには熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリア、サルマラリアがあります。発熱、悪寒、震えと共に38℃以上の熱発作に見舞われて発症し、頭痛、悪心、倦怠感などの症状が出て、マラリア原虫が赤血球を破壊して血液中に放出されるタイミングで、周期的に発熱を起こします。その周期は、三日熱と卵形マラリアでは48時間ごと、四日熱では72時間ごととされますが、熱帯熱マラリアでは不定期で短く、高熱が続くことになります。

 症状が進むと貧血や皮膚や白眼が黄色くなる黄疸が現われ、さらに進行すると肝臓や脾臓が腫れて、出血を止める働きをする血液中の血小板が減少していきます。特に熱帯熱マラリアは重症化しやすく、脳症、腎症、肺水腫、出血傾向、重症貧血など、さまざまな致命的な合併症を引き起こします。

 ですから、熱帯熱マラリアはできるだけ早く治療を開始する必要があります。発症してから治療開始までの期間が6日を超えると致死率が非常に高くなります。

関連キーワード

関連記事

トピックス

女優・遠野なぎこ(45)の自宅マンションで身元不明の遺体が見つかってから2週間が経とうとしている(Instagram/ブログより)
《遠野なぎこ宅で遺体発見》“特殊清掃のリアル”を専門家が明かす 自宅はエアコンがついておらず、昼間は40℃近くに…「熱中症で死亡した場合は大変です」
NEWSポストセブン
俳優やMCなど幅広い活躍をみせる松下奈緒
《相葉雅紀がトイレに入っていたら“ゴンゴンゴン”…》松下奈緒、共演者たちが明かした意外な素顔 MC、俳優として幅広い活躍ぶり、174cmの高身長も“強み”に
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン