好彦氏は妹である和子さんへの不満を恒常的に漏らしていたというが、その矛先は和子さんだけでなく一家全員に向けられていた。
「かまどになったのはもう80年近くも前のことだけど、ずっと恨みを募らせていたようだ。昔からことあるごとに『やっつける』『かたきを取る』と(言っていた)。たいてい和子に対して怒っていたが、時折『孫までやっつける』という不穏な言葉を口にしていた。『火をつける』という言葉も何回も聞いた。まさか……」(近隣住民)
好彦氏は長年、十文字一家への恨みを募らせていたことが窺えるが、事件に至る決定的なきっかけがあったのかなど詳細はわかっていない。だが、一家と親しい人は不穏な動きを感じ取っていた。
「十文字さん家は毎年花見をやっていたのに、今年、利美さんはやろうと言わず、どこか様子もおかしかった。今になってみると、いつもと違っていたのは、好彦さんから私生活について言いがかりをつけられていたからかもしれない。小さな子供もいるから好彦になにかされたら危ないと思ったんだろう」
事件から10日以上経つが現場には献花に訪れる人が絶えない。【後編に続く】