ライフ

「ナポレオンが勝った時と負けた時」「動き続けるものをどう描くか」名画で見る画家の技

グロ『アルコレ橋のボナパルト』

グロ『アルコレ橋のボナパルト』 1796年 油彩 カンヴァス 130×94cm ヴェルサイユ宮殿美術館

 今年2月に発売された学習図鑑『小学館の図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画』が、発売からたった1か月で3回の重版、累計発行部数は20万部と大ヒットを記録。「子供向けどころか、大人こそ読むべき!」「アート入門に最適!」と評判だ。この図鑑の中から、ナポレオンを描いた2枚の絵について、そいて「動き続けるもの」についての内容を紹介する。

勝ったときのわたしと負けたときのわたし

 同じ人物をモデルにしても、絵によって異なる印象を受けることがある。この2つの絵はどちらもフランスの軍人、ナポレオン・ボナパルトを描いたもの。グロ『アルコレ橋のボナパルト』は、27才のナポレオンが若き司令官として戦場で旗を振っている場面で、勝利したすぐ後に描かれたため、実際よりかっこよく描かれている。

 一方、ドラロッシュ『フォンテーヌブローのナポレオン』は45才のナポレオンが戦争に負けたときの姿を25年以上後に想像して描かれた絵。髪の毛も服も乱れだらしない格好に見えるが、鋭い目つきは左の絵と変わらない。負けてもなお諦めない心の強さが感じられる。

ドラロッシュ『フォンテーヌブローのナポレオン』

ドラロッシュ フォンテーヌブローのナポレオン 1840年 油彩 カンヴァス 177×131cm 軍事博物館 パリ

絶えず動き続けるものはどう描くか

 寄せては返す波、走っている動物、太陽の光……。動き続ける自然や生き物の一瞬を切り取って描いた作品もたくさんある。

・いまにも崩れ落ちそうな波

葛飾北斎『「冨嶽三十六景」神奈川沖浪裏』

葛飾北斎『「冨嶽三十六景」神奈川沖浪裏』 1831~1833年頃 大判錦絵  メトロポリタン美術館 ニューヨーク

 葛飾北斎『「冨嶽三十六景」神奈川沖浪裏』で、富士山よりもはるかに大きく描かれた白い波。盛り上がった波が崩れていく瞬間の水の動きをはっきりとした線で描き、迫力を出している。

・たくさんの脚や尾で動きを表現

バッラ『鎖につながれた犬のダイナミズム』

バッラ『鎖につながれた犬のダイナミズム』 1912年 油彩 カンヴァス 89.9×109.9cm オルブライト・ノックス美術館バッファロー

 バッラ『鎖につながれた犬のダイナミズム』で描かれている、鎖でつないだ犬を散歩させている様子。連続する動きがひとつにまとめて描かれているため、鎖、飼い主の足、犬の脚や尾がたくさんあるように見える。地面に描かれた斜めの線も動きを強調。

・雲や水の反射で太陽の光を描く

モネの『印象 日の出』

モネの『印象 日の出』1872年 油彩 カンヴァス 50×65cm マルモッタン美術館 パリ

 モネの『印象 日の出』での朝日が昇る港の風景。朝もやの中、太陽そのものはオレンジの円でくっきり描かれているが、太陽の光は雲に反映した朝焼けと、オレンジと白で描かれた水面の波の反射で表されている。

・前のめりな姿勢でスピード感を出す!

歌川広重『「東海道五十三次之内」庄野 白雨』

歌川広重『「東海道五十三次之内」庄野 白雨』 1834〜1836年頃 大判錦絵 シカゴ美術館

 歌川広重『「東海道五十三次之内」庄野 白雨』では、画面右手前で坂道を下る人と、左先頭で上る人に注目。どちらも前のめりで片足を蹴り上げ、反対の足に体重を乗せており、走る速さが表現されている。坂道が急なため、その速さがさらに強調されて見える。

※女性セブン2023年5月11・18日号

関連記事

トピックス

寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《ベビー服は男の子のものでは?》眞子さん、夫・小室圭さんと貫く“極秘育児”  母・佳代さんの「ラブコール」も届かず…帰国が実現しない可能性も
NEWSポストセブン
選手着用のレオタードやジャージから「スポンサーロゴ」が…(協会のSNSより)
新体操日本代表・フェアリージャパン「パワハラ問題」でレオタードから消えた「スポンサーロゴ」 スポーツ庁が求めた第三者調査を“秘密裏に実施”との関係者証言も
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“半日で1000人以上と関係を持った”美女インフルエンサー(26)がイギリスの公共放送で番組出演「口をすぼめて、吸う」過激ビジュアル
NEWSポストセブン
本格的に中国進出をめざすならば…(時事通信フォト)
《年内結婚報道》橋本環奈と中川大志の「結婚生活」に立ちはだかる“1万kmの距離” 2人の異なる“海外進出の希望先”
週刊ポスト
麻田雅文氏(左)と小泉悠氏
《『日ソ戦争』麻田雅文氏×小泉悠氏対談》ソ連の講和仲介に期待した日本人の「アメリカよりロシアのほうが話せる」という感覚
週刊ポスト
「池田温泉旅館 たち川」の部屋風呂に「温泉偽装疑惑」。左はHPより(現在は削除済み)、右は従業員提供
「水道水にカップ5杯の重曹を入れてグルグル…」岐阜県・池田温泉「高級旅館」の部屋風呂に“温泉偽装”疑惑 ヌルヌルと評判のお湯の真実は…“夜逃げ”オーナーは直撃に「誰からのリークなの? それ」
NEWSポストセブン
これまでジャズ歌手などとしても活動してきた参政党・さや氏(写真/共同通信社)
参政党・さや氏、歌手時代のトラブル証言 ジャズバーのママが「カチンときて縁を切っちゃいました」、さや氏は「そうした事実はない」…真っ向食い違う言い分
週刊ポスト
もうすぐ双子のママになる。Numero.jpより。
Photos:Mika Ninagawa
中川翔子3年にわたる不妊治療と2度の流産を経験 。 双子の男の子のママになる妊婦姿を披露して話題に
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《女優・趣里の現在》パートナー・三山凌輝のトラブルで「活動セーブ」も…突破口となる“初の父娘共演”映画は来年公開へ
NEWSポストセブン
岐阜の「池田温泉旅館 たち川」が突然の閉鎖、事業者が夜逃げした(左は旅館のInstagramより)
【スクープ】岐阜県の名所・池田温泉の人気旅館が突然の閉鎖 町が運営委託した事業者が“夜逃げ”していた! 町長からは228万円の督促状、従業員が告発する「オーナーの計画」 給料も未払いに
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン