芸能

増加する「歌バラエティ」は進化か原点回帰か フジテレビはなぜ合唱バトル?

『平成令和ヒット曲を100人が熱唱!オールスター合唱バトル』

『平成令和ヒット曲を100人が熱唱!オールスター合唱バトル』が放送

 かつてテレビ各局とも力を入れていたのが音楽番組だ。最近はその数はめっきり減ったが、形を変えて「歌バラエティ」として増加傾向にある。その狙いについて、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

 * * *
 14日19時から2時間特番『平成令和ヒット曲を100人が熱唱!オールスター合唱バトル』(フジテレビ系)が放送されます。

 この特番は吉田沙保里さん率いる「アスリートチーム」、村重杏奈さん率いる「Z世代チーム」、狩野英孝さん率いる「歌ウマ芸人チーム」、浅香唯さん率いる「80年代チーム」、さくらまやさん率いる「演歌歌手チーム」の5組100名が昭和・平成・令和のヒットソングを約1か月間練習して披露する合唱バトル。

 審査員を宮本亞門さん、岡本知高さん、ソニンさん、MCをDAIGOさんと松井玲奈さん、進行を伊藤利尋アナと堤礼実アナが務めるなど、豪華キャストをそろえた“歌”がテーマの新たな大型特番と言っていいでしょう。

 このところ、その“歌”がテーマのバラエティが増えています。特筆すべきは、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)や『CDTV ライブ!ライブ!』(TBS系)などの純粋な音楽番組ではなく、レギュラーバラエティのメイン企画が増えていること。

『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)は、サビの音程を外さずに歌えるかに挑む「サビだけカラオケ」。『バナナサンド』(TBS系)は、コーラス隊につられずに歌えるかに挑む「ハモリ我慢ゲーム」。『オオカミ少年』(TBS系)は、ベテラン世代とルーキー世代に分かれて歌いながら歌詞を当てるなどのゲームに挑む「ハマダ歌謡祭」など、カラオケ採点企画からの進化を感じさせるものが増えています。

 特番も今年だけで、1月13日に『世界なんでその歌知ってるの?』(テレビ東京系)、3月1日に『~アーティスト別モノマネ頂上決戦~俺にアイツを歌わせたら右に出るものはいない』(TBS系)、3月2日に『熱唱!ミリオンシンガー』(日本テレビ系)、3月31日に『この歌詞が刺さった!グッとフレーズ』(TBS系)、4月26日に『今聴きたい昭和の名曲!レジェンド18選~歌手別No.1ソング』(テレビ朝日系)などを放送。また、このところ『クイズ!ドレミファドン』『ハモネプリーグ』(ともにフジテレビ系)の放送頻度が増えていることを見ても、“歌バラエティ”が重視されている様子がうかがえます。

 なぜ令和の今、歌バラエティが選ばれているのか。ここまで増えているからには複数の理由があり、さらにそれは「フジテレビが日曜夜に合唱番組を放送する」という意義にもつながっています。

大型特番を経てたどり着いた歌バラ

 まずふれておきたいのは、“歌バラエティ”が増えた経緯。

 2010年代前後、『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』(フジテレビ系)や『うたばん』(TBS系)などの一世を風靡した音楽番組の視聴率が低下するなど、ゴールデンタイムにおける“歌”というコンテンツの影響力は間違いなく下がっていました。

 しかし、東日本大震災が起きたあと、「歌の力で東北や日本全国の人々を励ます、癒す、ねぎらう」という趣旨で各局が大型音楽特番を次々に放送し、軒並み高視聴率を獲得。その後も、ストレスやプレッシャーの多い世の中が続いていることもあって、これらの大型音楽特番は定期的に放送され続けています。

 ただ、視聴者が“大型音楽特番”という形式に慣れたほか、音楽は配信で聴く人が増えるなど、現状維持していくだけでは見てもらうことが難しくなっていました。

 そこで考えられたのが、純粋な音楽番組ではなく、さまざまな趣向を凝らした“歌バラエティ”。ゲームやクイズなどの要素を加えるほか、出演者のプライドをくすぐり、プレッシャーをかけるなどの演出で視聴者を引きつける歌バラエティが増えていきました。

 そんな流れの中で追い風となったのは、若年層の昭和・平成ブーム。TikTokやYouTubeなどで昭和・平成の楽曲が若年層に広がったことで、各局のテレビマンが「ネット上に少ない“歌バラエティ”という形なら彼らに見てもらえるかもしれない」という期待を込めて制作するようになっていきました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン