カビは常に空中に漂っているため、私たちは日頃から無意識に吸い込んでいる。しかし、大量に吸い込むと恐ろしい病気を引き起こす。カビが原因で起こる病気の症状と対処法を紹介する。
東京都在住のHさん(56才)が、花粉症のような症状に悩まされるようになったのは昨年6月のこと。会社では症状は出ないのだが、家に帰るとせきや鼻水が止まらないうえ、体がだるくなり、微熱が出ることも。新型コロナウイルスの感染も疑ったが検査結果は陰性。病院では夏風邪だろうとの診断だったが、薬をのんで2か月たっても症状が治まらない。
そんなとき、15年以上使っていたエアコンが故障し、買い替えることに。すると、症状が一気に緩和した。改めて医師に症状が改善されたことを含めて相談したところアレルギー検査をしてくれ、「夏型過敏性肺炎」と診断された。
「Hさんのように、梅雨から夏の時期になると、せきや微熱などの症状が出る人が増えています」
とは、東京原宿クリニック院長の篠原岳さんだ。
Hさんの症状は、トリコスポロンというカビによる夏型過敏性肺炎だ。これはアレルギー疾患のため、カビを除去するか、アレルギーを抑えるステロイド治療で改善する。風邪薬では治らないのだ。
このように、カビが体に影響を及ぼす病気には、ほかにどのようなものがあるのか。
「カビが原因で起こる疾患は大きく分けて3種類あります。1つ目はカビそのものが感染する疾患で、肺真菌症(主なものは肺アスペルギルス症)や髄膜炎などです。これらの疾患は、健常者であれば基本的に感染することはほとんどありません。ただし高齢者や、すでに別の病気を患っていて免疫力が低下している人は注意が必要です。いずれも抗真菌薬で治療をします。
2つ目はカビによるアレルギー反応。Hさんのような夏型過敏性肺炎や、アスペルギルスというカビが原因の気管支ぜんそくなどが挙げられます。トリコスポロンもアスペルギルスもエアコンに潜んでいることが多いため、エアコンの冷房を使う季節になると、これらのカビが冷風と共に室内にばらまかれ、アレルギー反応を起こす人が多いのです」(篠原さん)