繰り返し夏型過敏性肺炎にかかると、肺組織が線維化したり呼吸不全などの合併症を引き起こす恐れがあるという。古くて掃除が行き届いていないエアコンの場合、自分で掃除をしてもカビを取り切れないので、本格的に稼働する前に、専門業者に頼んで掃除と除菌をしてもらうか、買い替えた方がいい場合もある。
千葉大学真菌医学研究センター准教授の矢口貴志さんが解説する。
「これらのカビのうち、厄介なのは、肺真菌症やアレルギーの原因になるアスペルギルス。布団などにつく黒カビのクラドスポリウムや食品によくみられる青カビのペニシリウムよりも、空中に浮遊している数自体は少ないのですが、免疫力が落ちている人だけでなく健常者にもアレルギー症状が現れるため、いちばん気をつけなければいけないカビだと思います」
6月頃から湿度が高くなり、エアコンの冷房をつけ始める人は多い。エアコンは特に念入りに掃除しておいた方がいい。
知らずに食べて体内に蓄積されることも
カビが原因で起こる疾患の3つ目は、カビ毒が原因のものだという。カビ毒は、カビが食品について汚染されることで作り出される、体に有毒な物質をさす。
「カビ毒を作り出すカビには、青カビのペニシリウムがあります。りんごについて増殖するとパツリンというカビ毒を作ります。ほかにも、アスペルギルスがつくるアフラトキシンなどは輸入品のナッツや穀類、豆類、小麦などによくついており、知らずに食べて体内に入れると脂肪に溶け込み、体外へ排出しづらくなってしまいます」(篠原さん)
カビ毒を体内にため込むと、疲労感や集中力が低下するなどの体調不良が起こり、悪化すると、がんなどの原因になることもあるという。
知らずに口にし、長年かけて体内に蓄積されていくため、不調の原因がカビ毒だとわからないケースが多いという。そのため、危険性はまだ一般的に知られていないが、近年、東京都福祉保健局が注意喚起をしている。
このように、カビが原因で知らずにかかっている病気は、実は非常に多いのだ。
「肺炎や食道炎など、カビが原因で起こっている症状なのかどうかは、医師でもすぐにはわかりません。そのため、まずは抗生物質で通常の治療を行い、効かなければカビが原因の疾患ではないかと疑います」(篠原さん)
重篤な病気でも、原因がカビなのかどうかは検査をしてみなければわからず、原因が不明のまま悪化していくケースも少なくないという。