一方、ゼレンスキー大統領も広島に登場して、西側NATO陣営の首脳たちに、皆さん、もっと武器でも何でも支援をお願いします、と訴えたようだ。折角、平和を求めているはずの人たちが集ったのに、「この戦争を停止させるにはどうすればいいですか? 岸田議長のいい知恵を下さい」と相談に来たのではなかったのだ。
岸田首相は、もしもそう言われたら何と答えただろう。「最も強い言葉でロシアを非難する」なんて今さら言っても戦争は止まらない。しゃもじも何の役にも立たない。バイデン大統領は、ウクライナの兵士にF16戦闘機の訓練を支援し、他国からのF16の提供も許すと言った。首脳声明ではどこの国も、戦争が続く限り、軍事支援を続けるつもりだ。
殺し合いの続行を、支援するわけだ。直ちに殺し合いを終わらせようという首脳は、あの集まりの中には一人もいなかったようだ。広島の平和資料記念館が「戦争団結サミット」に無断使用されたように霞んでしまった。岸田議長の出る幕は、これでお終いだ。今、世界は、プーチンの反動を一番恐れている。
◆文責・井筒和幸
1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校時中から映画製作を始める。1975年にピンク映画で監督デビューし、『岸和田少年愚連隊』(1996年)と『パッチギ!』(2004年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。その後も 『黄金を抱いて翔べ』(2012年)、『無頼』(2020年)など、さまざまな社会派エンターテインメント作品を作り続けている。コラムニスト、鳥越アズーリFMでも日曜13時からの放談番組に出演中。