市区町村別の平均寿命ランキング 男女別上位1~25位(厚生労働省『令和2年市区町村別生命表』より作成)
新たにできた病院と施設
一方、麻生区在住の69歳男性はこんな見方だ。
「駅周辺に高級老人ホームやサ高住ができた影響もあるのではないか。裕福で元気な高齢者夫婦などが入居している印象です。入居者が住民票も移して、“健康長寿の住民”が増えた面もあるのでは。2012年に新百合ヶ丘総合病院ができるなど健康管理はしやすいと思います」
同じく麻生区に住む62歳会社員は、「深夜までやっている飲み屋が少ない」ことに言及した。
「駅周辺の大型商業施設に飲食店があるが、いわゆる“地元の飲み屋街”がない。夜10時とかに駅に着き、“そこから1杯”ができない。また、平日も休日も家と駅の往復は徒歩やバスだから、みんな適度な運動にもなる」
自治体間の健康格差の研究で知られる千葉大学予防医学センターの近藤克則教授(社会予防医学研究部門)は「地域環境要因が住民の健康・行動に影響することが、近年の研究で明らかになってきました」と解説する。
「歩くことが認知症予防によいとわかっていますが、車社会の地方より、公共交通機関が整備された都市部のほうが歩行時間は長い。健康に良いスポーツの実施頻度も、公園の近くで暮らしている人では2割多い。男女とも長寿1位になった川崎市麻生区のように、公園が多い、持ち家の戸建て住宅が多い、バス利用者が多いなどの環境は健康に良い環境だと考えられます」
サークルなどが多いと人との交流が活発になることも、健康面にプラスの影響が考えられると近藤氏は付け加えた。
これが“長生きできる街”の条件ということか。
※週刊ポスト2023年6月2日号