史上初の「3人同時の大関昇進」はあるか
千秋楽に同郷の先輩相手に白星を拾った豊昇龍は、来場所は東関脇として大関候補の筆頭格となる見込みだが、昇進を果たせば上位陣をモンゴル出身力士が占めていくかたちとなる。前出・相撲ジャーナリストはこう続ける。
「カド番大関だった貴景勝は8勝7敗でなんとか踏みとどまったが、ひざの故障からどこまで本調子に戻るか懸念される状況が続く。そうしたなかで大相撲の人気面を考えても、日本出身力士の奮起を期待する角界関係者は多い。かつて、2006年1月場所の栃東(現・玉ノ井親方)の優勝から2016年1月場所の琴奨菊(現・秀ノ山親方)の優勝まで、10年にわたって日本出身力士の優勝がない時代があった。その間は、朝青龍、白鵬(現・宮城野親方)、日馬富士、鶴竜(現・鶴竜親方)のモンゴル出身横綱たちが優勝をほぼ独占する状態が続いた。場所終盤までに星を伸ばした力士がそのまま優勝する展開も多く、盛り上がりと面白みに欠けると感じるファンは少なくなかった。
ちょうど、2010年に角界の野球賭博事件をきっかけに八百長問題が発覚した時期とも重なり、相撲人気が低迷した冬の時代でした。それが2017年にガチンコ横綱として知られた隆の里の愛弟子である稀勢の里(現・二所ノ関親方)が横綱に昇進し、白鵬と対峙する構図となって再び相撲人気が高まっていったわけです。そういう日本出身力士のスターの登場も待たれる状況と言えるでしょう」
来場所の大栄翔、若元春に続く日本出身力士の大関候補として期待が集まるのは、スキャンダルによる出場停止から幕内に戻ってきた大関経験者の朝乃山だが、5月場所は北青鵬、大栄翔、照ノ富士に敗れて12勝3敗で終わった。5月場所は東前頭14枚目だった番付は7月場所に前頭3~4枚目への昇進といったところになりそうだ。朝乃山自身が「年内の三役復帰を目指したい」とコメントしているように、大関復帰にはまだ時間がかかるだろう。
そんな状況下で来場所、大関候補の3人の中から誰が抜け出すのか。ダブル昇進なら1994年以来で、昭和以降で9例目となる。3人同時昇進となれば史上初だ。角界の勢力図が今後どう変わっていくかの試金石となる場所になりそうだ。