大物議員も当落線上に
自民党に上乗せされていた公明票が対立候補に寝返れば、集票力の2倍の“破壊力”を発揮し、大物議員でさえ落選に追い込む力を秘めている。
リストの公明票が多い20選挙区には萩生田氏の他、麻生副総裁、木原誠二・官房副長官、浜田靖一・防衛相などいずれも選挙に強い政権中枢の大物議員や大臣、大臣経験者らが並んでいるが、総選挙で公明票が寝返ればいずれも楽勝どころか当落線上の接戦になる可能性がある。
「麻生さんは公明党の推薦を受けていないが、公明党・創価学会は推薦していなくても選挙では基本的に連立相手である自民党に投票することが多い。だから自公の関係が壊れた場合、公明票が入らなくなるし、創価学会が麻生さんの選挙区で対抗馬に投票するように号令をかけることになれば、公明票の2倍の影響を受けることになる」(伊藤氏)
前回総選挙で、小選挙区で落選した甘利明・前幹事長は「スキャンダルを嫌った公明票が逃げて敗れた」といわれた。その甘利氏は次の総選挙では神奈川13区から分離・再編して誕生する新20区に鞍替えするが、同選挙区にも約2万2000票の公明票がある。公明の選挙協力が得られなければ次も厳しい選挙戦になりそうだ。
そうした「公明票寝返り」の危機に直面しているのが自公選挙協力の解消が決まった東京選出の自民党議員たちだ。
前回総選挙で自民党は東京の25選挙区のうち16選挙区で勝利した。だが、自民党資料の各選挙区の公明票をもとにシミュレーションすると、次の選挙で自民党の議席は激減する。
前回の得票から、公明票の上乗せがなくなると計算すると、小倉將信・少子化相(23区)らが落選の危機に追い込まれて自民の選挙区当選は8議席に減る。さらに公明票が全部対立候補に寝返った場合、前述の木原官房副長官(20区)や下村博文・元文科相(11区)らも落選危機となり、自民は萩生田氏の1議席を守れるかどうかという状況だ。
東京は定数是正で次の総選挙から30選挙区に増えるが、それでも、自公破局で公明党が本気で自民党候補の“落選運動”に乗り出せば、最悪、東京での自民全滅もあり得ない話ではない。
サミット成功に浮かれた岸田首相は総選挙に前のめりだが、その足元はいまにも崩れ落ちそうな状態なのだ。
※週刊ポスト2023年6月23日号