特殊詐欺への注意を呼びかけた
軽妙なかけあいで特殊詐欺の実態が明かされ、ハガキを介した手口から《詐欺のホームラン王》こと固定電話を介した劇場型詐欺の手口へ。具体的な詐欺犯罪の流れをなぞりながら、「かけ子」「出し子」「クレジットカード」「ATM」「暗証番号」「還付金」「指示役」、はたまた「留守番電話、通話録音機能付き電話機」などといった、特殊詐欺や防犯対策に関するキーワードがポンポン飛び出す。テンポのいい展開に客席の来場者も頷きながら、前のめりに。
パソコンに届くフィッシングメールに話題が及んで《URLをクリックすると……》と展開すると、「へぇ~!」と声を漏らして、深く頷く来場者の姿も。最新の犯罪傾向や犯罪件数も織り交ぜた、盛りだくさんの内容で客席を引き込んだ。
朝馬によると、この「詐欺に勝つ(喝!)」を作ったのは5年前。住まいのある地域で18年来、高齢者や身障者の通院サポートをする運転ボランティアをしているといい、「利用者には独居のかたが多いんですが、“最近どうも妙な電話がかかってきた”“へんなハガキが届いた”といった声をよく耳にするんです。それがこの落語を作るきっかけでしたが、最近になってもそうした声が増え続けているので注意喚起のため、内容は常に更新しています。AIのなりすましは新ネタとして、今日の高座で急遽、取り入れました」と、明かした。
その試みが功を奏し、終演後に感想を訊ねると「最近は詐欺の手口にAIのなりすましもあるなんて驚いたわ!」と話す観客もいた。
客席の生の反応に触れた杉は、「今日は“寄席を通じて詐欺をなくしていこう”と、訴えたかったんですが、わかりやすく説明できたと思います。皆さん、詐欺に引っかからないように!」と呼びかけ、「あの世で志ん駒や志ん五が喜んでいるなと考えながら、いろいろな思いを巡らせて聴きました」としみじみ感想を述べた。
そして「しかし、42年も時間が経つと、こんなにも変わってしまうとは。“食えない”と言っていたみんなが大師匠となって、フサフサしていた髪が今や……」と、笑わせた。
最後に、杉は「特殊詐欺について、こうして様々なジャンルの皆さんが直接アナウンスしていただくことに意義がある」とあらためて手応えを語ると、朝馬による詐欺防止落語の新作へ大きな期待を寄せた。