佐々木朗希の投球動作

佐々木朗希の投球動作

ボクは1試合に5~6球しかフォークを投げなかった

 杉下氏は、「フォークボールはあまりたくさん投げなくていい」とも話していた。

「ボクは“フォークの神様”なんて呼ばれていますが、実は勝負どころでしか使わない大切な切り札の位置づけでした。だから1試合に5~6球しか投げなかった。主に巨人の川上哲治さんを打ち取るために投げていました。ボクのフォークが打者のバットに当たった記憶があるのは1回だけ。

 むしろボクが投球で大切にしていたのはコントロールです。打者の弱点を丁寧につけばスピードがなくても抑えられる。また、アウトコース、インコースは狙ったところを外れる場合も、ストライクゾーンの外側(ボールサイド)にいかないとダメなんです。佐々木君もコントロールは悪くないが、そのあたりがこれからの課題だね」

 速いストレートとコントロール、その2つがなければ変化球の効果は薄れると繰り返し指摘した杉下氏。そして、今の選手が投げているフォークボールについてはこうみていた。

「フォークボールはナックルボールのこと。回転させないで落とす投げ方です。今の選手が投げている回転させながら落とすのはスプリットフィンガーボール。フォークは蝶々が舞うように左右に揺れながら落ちたのでキャッチャーがミットで追いかけたが、今は追いかけないのでその違いがわかります。フォークの亜流を投げているピッチャーがたくさんいるが、ボク以外にホンモノを投げていたのは村山実(元・阪神)や村田兆治(元・ロッテ)など数人。最近でいえば佐々木主浩(元・横浜)ぐらい。その他のピッチャーはフォークボーラーと名乗ってもらいたくない。

 変化球を投げるのが一流ピッチャーではなく、コントロールを大切にするピッチャーが一流なのです。キャッチャーがアウトコースを要求するとそれに合わせて内野も守備位置を変える。だから逆球になると守れない。内野エラーもピッチャーの責任なんです」

 取材のたびに熱心に自身の野球理論を語ってきた杉下氏。その杉下氏が最後に注目したロッテ・佐々木は6月18日に登板予定。天国の杉下氏が目を見張るような、フォークボールを駆使した快投を見せられるか。

◆取材・文/鵜飼克郎(ジャーナリスト)

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