国際情報

中国新疆ウイグル自治区に「第2の首都」構想 海上貿易のリスク軽減、中央アジア諸国やロシアと関係強化も

北京に次ぐ「第2の首都」を建設する構想

北京に次ぐ「第2の首都」を建設する構想

 中国の西北部に位置し、中央アジア諸国に近い新疆ウイグル自治区に、北京に次ぐ「第2の首都」を建設する構想が明らかになった。四川大学などの研究チームが中国政府に提言した。

 習近平国家主席は5月18、19日の両日、中央アジア5カ国首脳を招待し、陝西省西安市で「中国・中央アジアサミット」を初めて主宰するなど中央アジア諸国との関係を重視している。そんななかで、第2の首都が建設されれば、歴史的にもつながりが深い中央アジア諸国にロシアを加えた6カ国との経済面や安全保障面でのつながり一層強化されることが見込まれるという。中国共産党同自治区委員会機関紙「新疆日報」が報じた。

 この構想は四川大学と上海の復旦大学の共同研究チームがまとめた。提言によれば、上海や広州などを中心とする工業地帯で製造された工業製品は海路で海外に輸出されることが多いが、海上貿易の場合、米国などとの航路をめぐる係争が絶えないうえ、台風などの自然災害も多く、いざという場合、中国の経済や社会に深刻な影響を与える可能性がある。しかし、中央のアジアの陸路や鉄道を使用すれば、海路よりもリスクが少ないという利点があるということに着目したという。

 また、第2の首都建設によって、現在の首都・北京が直面している環境悪化や人口過剰などの問題にも対処することができるとしている。特に、新疆ウイグル自治区はユーラシア大陸の諸国を結ぶ伝統的なシルクロードを基本とした「一帯一路」経済圏の重要拠点であり、同自治区に第2の首都を建設することで、中央アジア諸国やロシアとの関係強化で、経済面ばかりでなく、軍事・安全保障面でも大きなメリットがあるという。

 この論文が発表されてから1カ月後に、習主席が「中国・中央アジアサミット」を開催しており、同紙は同自治区での第2の首都建設構想がより現実味を帯びてきたと報じている。

 歴史的にも漢王朝(紀元前206年~西暦220年)の時代には中国西北部の西安市に首都がおかれ、世界で有数の都市文化が花開いた。北京に首都がおかれたのは元朝(1271~1368年)からだが、中国西北部の陝西省や同自治区を起点としたシルクロード文化は漢代から中国と地中海地域やヨーロッパの社会を結んだ交易路の広大なネットワークを通じて1400年にわたって栄えている。「第2の首都」構想実現の可能性は未知数だが、共産党指導部が西北部を重要視していることは間違いないだろう。

関連キーワード

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン