ライフ

「やばい」「二重敬語」使われ方が変化する言葉はどんどんインプットしたい。ドイツ出身文筆家は“言語マニア”【連載「日本語に分け入ったとき」】

ドイツ出身のマライ・メントラインさん

ドイツ出身のマライ・メントラインさん

 日本語を母語としないながらも、今は流暢でごく自然な日本語で活躍している外国出身者は、どのような道のりを経てそれほどまで日本語に習熟したのか。日本語教師の資格を持つライターの北村浩子氏がたずねていく。今回は、ネットスラングも交えた多彩な日本語で文芸評論からコメンテーターとしてのテレビ出演まで幅広く活躍する、ドイツ出身のマライ・メントラインさんにうかがった。早稲田大学への留学中、やや気になる「指導」をされたという。【全4回の第3回】

 * * *

 大学生活は、戸惑いも少なからずあったようだ。

「日本人の友達を作りたかったけど、これがね、意外に難しかった。留学生のいる建物に来る日本人学生はそこで英語を学び、英語を話したいわけです。でもこちらは日本語でコミュニケーションしたい。噛み合わないんですよね。私はのちに夫になる人とたまたま知り合ったので日本語でやりとりできたんですけど、英語の練習台にされるのがつらくて、フランス語しか話せないよっていうふりをしていた留学生もいました。

 言葉の学習でも、ちょっと『それはないんじゃないかな』って思うこともありました。『日本語でこんなふうに言いますか?』と質問すると『日本人は言いません』とか『そんな日本語はない』って言う先生がいてね。他の日本人に聞くと『言うことあるよ』って言われたりして、うーん……ってなることがありましたね」

 日本語を教えていると、つい「日本人は…」と言いそうになる時がある。「日本人」という大きい主語で、言葉の正誤について断言するのは要注意だとその度に思う。自分の言語感覚は絶対ではない。

「全否定されると、こちらとしては結構キツいんですよね。日本人の日本語に近づきたいと思って頑張っているけれど『やっぱり外人だから分からないと思われているのかな』という気持ちになってしまう。言葉ってフレキシブルなものだから、意味や使われ方の変化もあると思うんです。

 私が姫路の高校に留学していた1999年から2000年、『やばい』っていうのは本当によくないこと限定の『やばい』だったんですよ。でも、大学留学の頃には『すごい』『たまらない』っていう感覚も付加されて、使い方がすごく広がった。急激に変わったんですよね。『おっしゃられる』みたいな二重敬語もそうですけど、みんなが使うと、文法的に正しいかどうかは別にして『普通の言葉』『存在する言葉』になる。だから常に気にして、インプットしていかないと、と思います。学んでる最中は特に」

関連キーワード

関連記事

トピックス

違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
1泊2日の日程で石川県七尾市と志賀町をご訪問(2025年5月19日、撮影/JMPA)
《1泊2日で石川県へ》愛子さま、被災地ご訪問はパンツルック 「ホワイト」と「ブラック」の使い分けで見せた2つの大人コーデ
NEWSポストセブン
男が立てこもっていたアパート
《船橋立てこもり》「長い髪に無精ヒゲの男が…」事件現場アパートに住む住人が語った“緊迫の瞬間”「すぐ家から出て!」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《美女をあてがうスカウトの“恐ろしい手練手管”》有名国立大学に通う小西木菜容疑者(21)が“薬物漬けパーティー”に堕ちるまで〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者と逮捕〉
NEWSポストセブン
江夏豊氏が認める歴代阪神の名投手は誰か
江夏豊氏が選出する「歴代阪神の名投手10人」 レジェンドから個性派まで…甲子園のヤジに潰されなかった“なにくそという気概”を持った男たち
週刊ポスト
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さま、筑波大学で“バドミントンサークルに加入”情報、100人以上所属の大規模なサークルか 「皇室といえばテニス」のイメージが強いなか「異なる競技を自ら選ばれたそうです」と宮内庁担当記者
週刊ポスト
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン
子役としても活躍する長男・崇徳くんとの2ショット(事務所提供)
《山田まりやが明かした別居の真相》「紙切れの契約に縛られず、もっと自由でいられるようになるべき」40代で決断した“円満別居”、始めた「シングルマザー支援事業」
NEWSポストセブン
新体操「フェアリージャパン」に何があったのか(時事通信フォト)
《代表選手によるボイコット騒動の真相》新体操「フェアリージャパン」強化本部長がパワハラ指導で厳重注意 男性トレーナーによるセクハラ疑惑も
週刊ポスト
1990年代にグラビアアイドルとしてデビューし、タレント・山田まりや(事務所提供)
《山田まりやが明かした夫との別居》「息子のために、パパとママがお互い前向きでいられるように…」模索し続ける「新しい家族の形」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
【国立大に通う“リケジョ”も逮捕】「薬物入りクリームを塗られ…」小西木菜容疑者(21)が告訴した“驚愕の性パーティー” 〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者に続き3人目逮捕〉
NEWSポストセブン