ホテルのバーに連名のボトル
さだから、終わりを切り出された時、実は「そろそろ俺の役目は終わりかな」とも思ったんです。体調を崩したのは事実でしたが、そもそも、さだはひとりで音楽活動をやろうとしていた。そこにたまたま居合わせた私が加わった。
ひとりでやろうとしていた当初の気持ちが高まってきたのかな? そのようにも感じました。ケンカ別れしたわけでもなく、音楽性が食い違ったというようなことでもありません。
ちなみに音楽性でいうなら、私は「ジャズ」。さだの基本は「クラシック」。最初から異なる方向性の2人が組んだのがグレープでした。
解散したあと、定期的に会うとか、そういうことは一切ありませんでしたが、都心のホテルに、共通の行きつけのバーがありました。そこに、連名でボトルをキープしていたんです。ルールは簡単で「飲みきったほうがボトルを入れる」。
しょっちゅう行くようなバーではありませんでしたが、それでも行くと、3回に1回は、さだとばったり会っていました。2人で会った時のルールは、「アレバダスの法則」。お金があるほうが支払いをするという決まりです。
私は、会社で後進を指導する立場にあったので、後輩たちをそのバーにもたまに連れて行きました。でも、そういう時に限ってさだに会わない。いたら、まとめて、おごらせたいのに(笑)。
さだとは何年も音信不通になることもありましたし、私から用もなく連絡を取ることもありません。偶然会ったら話し込む。そんな関係が私たちにとって心地好い距離感だと思います。
※さだまさしとゆかいな仲間たち・著『うらさだ』より抜粋して再構成