パートタイムの場合、2000円まで昇給する(コストコの採用ページより)
宮城県のショッピングモールに勤める知人にもコストコの話を向ける。宮城県といっても仙台とそれ以外では平均時給の差がある。それでも東北一の大都市を抱える宮城県なのに、最低賃金は群馬どころか富山(908円)、石川(891円)、福井(888円)といった北陸3県の最低賃金より低い。そんな宮城県にもコストコは進出した。
「1200円は東京の最低賃金より高い。ショッピングモールのテナントでもスタート1200円を出せるところは多くない。900円、950円が多い」
確かに都心の居酒屋すら1200円を切る店は多い。ましてコストコは平日日中でも1200円。仙台市内ならともかく、隣接する町とはいえ地域で時給1200円を出せる企業は限られるだろう。ポジションによっては1500円スタート、多くは太刀打ちできない。
「人づての話だが、できるアルバイトほどコストコに流れたと聞く。時給が高いということで倍率はそれなりに高いのだろうが、小売の優秀な若手、とくにアルバイトがコストコに行くのは自然な流れだ。時給もいい、正社員率も高い、イメージもいい、名札は本名でなくていい、この国の小売がようやく手をつけたこと、まったくする気のないことすべてをコストコは『グローバルスタンダード』によって実行している。ましてあの時給、地方ではとても真似できない」
結局のところ「時給をコストコより上げればいい」という、ただそれだけのシンプルな話だがそれができない。魅力的な職場でないと判断されている。
「時給がそれほど多くなくてもカフェなどは人気だ。外資系の大手カフェチェーンなどは倍率も高い。それだけ魅力があるということだ」
人手不足とは企業に払えるお金がない、払う気がないと同時に「魅力がない」から来ないとも言える。とくに引く手あまたの若者に選んでもらえない。それまで「代わりはいくらでもいる」と労働者を選別してきた日本企業だが、いまや「選ばれる側」「選んでもらえる対象」にならなければならないのに。若者が欲しければなおのことだ。
「離職率が低ければ通年の採用コストも下がる。社員教育も長期的な視点で取り組める。はっきり言って、この国の小売は待遇が悪すぎた。私も満足していない。ある商店会で高齢の店主が『コストコが金にあかせて人をかき集めている』『地域を乱している』とこぼしていたが、一部とはいえそういう残念な経営者がいまだにいる。出すものを出せばいいだけだ」(前出の宮城県ショッピングモール社員)