正直に話してくれたが、日本の時給の決め方は「どんぶり勘定」「その時の経営者の気分」「人を見て決める」「周りに合わせる」が横行してきたのは事実だろう。厳正な人事考課とは名ばかりでそれこそ「さじ加減」「お気持ち」で決めてしまう。人事評価の不満要因が「基準の不明確さ」であることは多くの労働者アンケートでも上位だが、この国の永遠の課題(というか多くは直す気がない)のままではないかと思わされる。
群馬ではないが、筆者の元教え子でアルバイトをしている男子大学生にコストコの話を振る。
「コストコ、近くにあったら土日だけでも入りたいですね。時給が高くて透明性がある、それが一番じゃないですか。働きやすさとかはわかりませんが、どっちにしろ、日本は時給が安くて仕事環境も悪いバイトばかりですから」
この国のアルバイト不足は深刻だ。とくに飲食業と小売業は重症で、コロナ禍も明けたかに思われた矢先、人手不足による時短や臨時休業、人手不足による廃業まで報じられて久しい。日本フランチャイズチェーン協会の挙げる「急激な社会環境変化への対応遅れ」とは、まさしくこの国の少子化、人口減に経営サイドの感覚が追いついていない、それに伴う労働者の価値観の変化を理解していないという点にある。はっきり言って、コンビニや居酒屋などの小売、外食は多くが労働者から選んでもらえていない。
また7月に入り、18歳未満の未婚の子どものいる世帯そのものが991万7000世帯(厚生労働省)と初めて1000万世帯を下回ったことが話題となったが、つまるところ現在の団塊ジュニア(1971~1974年生まれ)、氷河期世代(1990年~2000年代に就職活動を行った35~55歳)の多くがその「18歳未満の未婚の子どものいる世帯」を形成できなかった、そうした国のままに「代わりはいくらでもいる」と放置したこともまた、「急激な社会環境変化への対応遅れ」だろうか。
ともあれ、そうした人手不足の中でコストコは「グローバルスタンダード」を持ち込んだ。最低賃金にあぐらをかいていた企業、とくに地方は「コストコに(人を)取られる」「コストコが(地域の)賃金を壊している」と危機感を募らせている。
この国の小売は待遇が悪すぎた
「群馬などまだいい。あのあたり、実際の時給はもう少し高いだろう。この地域は883円だ。実際の時給も最低賃金に近い」