レディースたちの派手なグラビアはごく一部だった

レディースたちの派手なグラビアはごく一部だった

比嘉:それはないよ(笑い)。だって当時、『ティーンズロード』の発行部数って10万部を超えてたんだけど日本にそんなにたくさんヤンキーはいるわけがないから。

 実際、編集部に設置していた「HOT-TEL」という24時間留守録できるメッセージ電話にはそういう子たちからの「生きているのがしんどい」とか「学校や家でうまくいかない」といった声が毎日たくさん吹き込まれていたし。

かおり:雑誌の中に、その声に答えるコーナーがあったもんね。そういう声を受け入れる場所を作ってたのってすごいことだと思う。

「命の電話」のさきがけって言ってもいいんじゃない?

比嘉:そうかもしれないね。おれも編集者として40年以上仕事をしてきたけれど、『ティーンズロード』だけが唯一誇れる雑誌なんだ。

──30年前の出来事を、2人はまるで昨日のことのように振り返る。その記憶は2冊の本でも生々しくも鮮やかに綴られている。

比嘉:30年経ったのに、『ティーンズロード』に出ていた子といまだにつきあいが続いているのは本当にうれしい。かおりちゃんみたいに本を出した子もいれば学校の先生になったり、NPO法人の代表をやっている子もいて、出会ったときは自分の方が大人だったはずなのに気がついたら完全に立場を逆転されちゃった。

かおり:当時一緒に過ごした地元の仲間も、それぞれ一生懸命生きてるよ。私もそうだけど、子供がいたり、仕事に忙しかったり……。

比嘉:しかもみんな、子育てはしっかりして、しつけも厳しいんでしょ?

かおり:そうだね。子供がぐれそうになったら「私を超えられるくらいやるんだったら許す」と言って黙らせた子もいたよ。

比嘉:それはなかなかハードルが高いだろうな(笑い)。

かおり:いまは昔と違って、スマホもあるし親の目には見えない部分も多いから、難しいことも多いけどね。

比嘉:その時代に合わせて、ある程度器用に生きていくのも大切なんだろうね。おれにはなかなか難しいけれど。

かおり:だけどやっぱり、いつの時代も不良をやるならちゃんと、全力でやってほしい。

比嘉:あの頃のかおりちゃんたちのように、びしっと硬派にね(笑い)。

【プロフィール】
比嘉健二(ひが・けんじ)/1956年、東京都足立区出身。1982年にミリオン出版に入社。『SMスピリッツ』などの編集を経て、『ティーンズロード』『GON!』『漫画ナックルズ』など次々に人気雑誌を立ち上げる。現在は編集プロダクション『V1パブリッシング』代表。

『特攻服少女と1825日』小学館/定価1650円
居場所を求めてさまよっていたレディース総長たちと「活字のマブダチ」との青春の日々、そして彼女たちのいまを照射したノンフィクション。

かおり/1974年、台湾生まれ。16才でレディース暴走族「貴族院・女族」を結成。『ティーンズロード』に載り、人気レディースとして全国的に有名に。2児の母となった現在も根強いファンがおり、出演したYouTubeの番組は再生回数1700万回を突破している。

『「いつ死んでもいい」本気で思ってた…』大洋図書/定価1430円
レディース総長として過ごした日々や芸能界入りと挫折、夫からのDVと離婚……かおりさんの壮絶な半生を綴った自伝。

※女性セブン2023年8月3日号

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