「血圧」が眼科医の“盲点”
さらに怖いのが、目のかすみが「緑内障」の症状だった場合だ。
「緑内障の症状は『視野が欠ける』ことが特徴ですが、ある程度進行すると目がかすむ症状が出る場合があります。治療は進行を抑えるための点眼薬で眼圧をコントロールしますが、それでも進行が止まらない場合があるので要注意です」
ポイントとなるのが「血圧の状態」だという。
「近年の研究では、緑内障は眼圧のほかに目の血管や神経の健康状態が関係すると示唆されています。高血圧のダメージが目にも及ぶわけですが、血圧は薬で下げ過ぎるとふらつきによる転倒にもつながるため、眼科医が『もっと血圧を下げたほうがいい』とは言いにくい。ただ、高血圧を放置していると緑内障の進行を抑えるのは難しくなる」
緑内障で受診する際は、血圧など全身状態について眼科医に共有することが大事だという。緑内障の治療では手術の選択肢もあるが、いいことばかりではない。
「緑内障の手術は、将来的に進行しないよう予防的にするものですが、視力低下することもあるデメリットがあります。患者さんがそれを理解しないまま受けると、思わぬ不幸を招きかねません」
モノが2つに見える症状の場合、「目」そのものが原因ではない場合も。
「両目で見てモノが2つに見える症状を『両眼性複視』と言い、原因は脳や血管にある場合があります。また、成人で生じる斜視も目だけの病気ではなく、脳に問題がある場合がある。とりわけ重要なのが動脈瘤で、放置すると破裂して、くも膜下出血につながる恐れがあります」
言うまでもなく、耳や目は日常生活を送るのに欠かせない大事な器官。少しでも異常を感じたら、「大したことない」と放っておくのは危険だ。速やかに専門医に相談することが重要になる。
※週刊ポスト2023年8月18・25日号