処理水にはほかの放射性物質も含まれている?
【Q2】トリチウムは生物濃縮されるのではないか?
【A2】トリチウムは水の形で存在するので、生物濃縮はされない。
放射性物質のストロンチウム90は、骨に集まりやすく、体内に長く残る。では、トリチウムは人体の中で生物濃縮するのか。
「トリチウムは単独で存在するのではなく、水(H2O)のHと置き換わる形で存在し、水と同じように振る舞います。人や動物の体の中で水は循環しているので、特定の部位に偏在することなく、均一に分散し、いずれ排出されます。ですから、生物濃縮は起きません」
もし生物濃縮するなら、そのしくみを応用してトリチウムを除去できるはず。普通の水と同じように振る舞い、生物濃縮もしないせいで、除去が困難なのだと言える。
【Q3】トリチウム以外の放射性物質はすべて測定されているわけではない。だから、処理水には残っているのではないか?
【A3】ゼロではないが、ALPSによって海洋放出の規制基準を下回るまで除去されている。
処理水に含まれる放射性物質については、64種類を測定しているが、すべて測定しているわけではない。それをもって、測定されていない放射性物質が処理水には残っているから放出はダメだと主張する人がいる。では、なぜすべて測らないのか。
「ものすごく微量なものは測っていないというだけのことです。個別には測っていませんが、トリチウムを除くすべての放射性物質を含めた総和で、処理水を毎日2リットル飲み続けてもそれによる年間の内部被ばく量が1ミリシーベルトに達しないくらいにまでALPSで放射性物質を除去しています。そのうえで、トリチウムは除去できないので、100倍以上に水で薄めて海洋放出する。海水でさらに希釈されることになります。ですから、完全にゼロとは言えないが、無視できるレベルと言っていいと思います」
重要なのは濃度で、十分に薄めれば安全と言えるはずなのだが、すると今度は「濃度ではなく、総量が問題だ」との反論が出てくる。