関心を呼ぶカラー化で映像の価値を再認識する
「上野山下の街頭を埋めた避難民」。避難してきた被災者でごった返す上野山下。通り中央の市電は停車したまま運行はしていない。震災当日、近隣の上野公園には約50万人の被災者がひしめいていたといわれている(所蔵元:国立映画アーカイブ)
国立映画アーカイブの特設サイト「関東大震災映像デジタルアーカイブ」では、発災から復興までの記録映像が閲覧できる。映し出されるのは被災者だけではない。
「警官や消防団、救護に向かう人など、さまざまな立場の人々が捉えられています。一人ひとりの存在から震災の現実を見つめていくことが必要です」(同前)
今回、身近に感じられるよう当時の白黒映像を独自に切り出し、本誌『週刊ポスト』掲載用にAI技術を用いてカラー化した。
「当時の体験を可能な限り忠実に再現するのが私たちの立場です。一方、カラー化は現代人の関心を喚起するもの。関心が高まることで映像の持つ価値をよりよく認識してもらえれば、と考えています」(同前)
過去の記録から学ぶべきことは多い。今後の備えに活かせるかどうかは、今を生きる人々の意識にかかっている。
【関東大震災映像デジタルアーカイブ】
未曾有の巨大災害についての知識と関心を高めることを目的に、国立映画アーカイブで所蔵する、サイレント映画『關東大震大火實況』をはじめ、関東大震災にまつわる映画を公開する特設サイト。動画のほか、専門家によるコラムや関連資料なども公開している。
https://kantodaishinsai.filmarchives.jp/
文/小野雅彦 画像提供/国立映画アーカイブ 色再現/アジャストフォトサービス
※週刊ポスト2023年9月8日号