沖縄都市モノレール(通称「ゆいレール」)が開業20周年を迎え、記念式典であいさつする沖縄県の玉城デニー知事(時事通信フォト)
開業当初は那覇空港駅―首里駅間の約12.9キロメートルだったゆいレールは、2014年に那覇市に隣接する浦添市のてだこ浦西駅まで延伸開業。那覇市民だけではなく、浦添市から那覇市への通勤路線としても利用されるようになった。現在、てだこ浦西駅から先への延伸を求める声もある。このように、沖縄県で鉄道は決してオワコン化していない。
那覇市と名護市を約60分で結ぶ計画
また、ゆいレール以外の鉄道を建設する動きも沖縄県では高まっている。それが、沖縄鉄道軌道計画だ。
「同計画は2014年に発足したプロジェクトで、県都・那覇と北部の交流拠点都市である名護とを結ぶ鉄道軌道計画です。同計画は那覇と名護を約60分で結ぶことを目指しています」と話すのは、沖縄県企画部交通政策課の担当者だ。
担当者によると、沖縄鉄道軌道計画は駅予定地やルートなどは決まっていないとのことだが、仮に那覇市役所から名護市役所までを結ぶとしたら約70キロメートルもの距離がある。それほど距離が離れているので、名護市は那覇市の通勤圏になっていない。しかし、沖縄県企画部交通政策課の担当者が説明するような那覇市と名護市を約60分で結ぶ鉄道が実現すれば、名護市は通勤圏に入ってくる。さらに、それ以上の効果も期待されている。
「現在、沖縄県は那覇市に人口も企業も一極集中している状態です。これでは、那覇市および周辺都市は発展しますが、沖縄本島の中部・北部の地域が発展しません。那覇市と名護市を約60分で結ぶ鉄道が実現することで、中部や北部に企業が進出することを促すことができます。それは県土の均衡ある発展にもつながるのです」(沖縄県企画部交通政策課担当者)
那覇市と名護市を約60分で結ぶことを目標にしていることもあり、鉄道軌道計画はゆいレールを延伸するものではなく、まったく別の鉄道プロジェクトとして取り組まれている。
沖縄鉄道軌道計画はまだ緒に就いたばかりなので、先述したように駅の予定地もルートも決まっていない。また、需要予測といった調査もされていない。
沖縄鉄道軌道計画が越えなければならないハードルはたくさんあるが、ゆいレールの好調ぶりからも決して夢物語ではないだろう。地方都市で鉄道が縮小する流れにある中、それに反して沖縄県では鉄道拡大の機運が高まっている。