理由はギャンブル施設へのアレルギーから地元支援者の間にも根強かったIR誘致への反対を踏まえたからだったが、IRを五輪後の景気浮揚策と位置づけていた菅氏は当初困惑を隠せなかったとされる。菅氏が首相となるに当たって自民党総裁選では菅氏の選対本部長を務めただけに、菅氏は最終的に理解を示すこととなったが、小此木氏は蔓延中だった新型コロナウイルスの専門家をアピールした元横浜市立大教授に敗れて落選。そのまま56歳の若さで政界を引退することになった。

「国家公安委員会委員長は、治安維持の重責であり、身の引き締まる思い。(五輪の)東京大会の開幕が間近に迫っており、大会の安全かつ円滑な開催に向けた対策に万全を期す」──。

 小此木氏の降板で急遽、リリーフに起用された棚橋泰文氏(旧通産省OB)はこの日、大臣就任会見で意気込みをこう語り、約3か月後の2021年10月4日、離任会見では「開催国としての治安責任を全うすることができた」と五輪成功を総括。胸を張った。

 棚橋氏は親戚に人気プロレスラーの棚橋弘至さん(新日本プロレスリング)がいるが、本人はいかにも官僚出身のよく言えば堅実な、いわゆる地味なイメージ。“緊急登板”を乗り切ったことに心底安堵したそうだ。すっかり軽量級ポストと化しているが、定員総数29万人の警察職員を指導する立場の国家公安委員長は問題発言厳禁だ。谷氏の後任となり9月14日の就任会見で「身の引き締まる思い」と述べた松村祥史氏(元会社社長)は初入閣組の参院議員。ローンオフェンダー(単独テロ犯)やサイバー犯罪など難題山積の中、全国の警察職員はその政治手腕に注目している。

【プロフィール】
大島真生(おおしま・まなぶ)/1968年東京生まれ。新聞記者。早稲田大学政治経済学部卒業。産経新聞で警視庁や警察庁、宮内庁などの担当を歴任。著書に『公安は誰をマークしているか』『愛子さまと悠仁さま』『特捜検察は誰を逮捕したいか』など。

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