ビジネス

大手私鉄・西武鉄道が東急電鉄と小田急電鉄から中古車両を譲受する理由

東急大井町線(中延~荏原町)を走る東急電鉄9000系車両(時事通信フォト)

東急大井町線(中延~荏原町)を走る東急電鉄9000系車両(時事通信フォト)

 設備の更新が環境負荷の低減にもつながることは、家電を新しくしたら電気代が安くなった体験などで理解がすすんでいるだろう。鉄道会社も同様で、とくに新車両導入は速く走るといった性能向上だけでなく、CO2削減などの効果も得られる。ライバル企業でもある他の大手私鉄から中古車両を購入することを決めた西武鉄道の事例から、ライターの小川裕夫氏が鉄道の3R(リユース・リデュース・リサイクル)についてレポートする。

 * * *
 2023年9月26日、西武鉄道は鉄道車両を東急電鉄・小田急電鉄から譲受することを発表。これが、鉄道関係者やファンを驚かせている。

 鉄道業界において、他社から中古の鉄道車両を購入することそのものは珍しくない。例えば、東京メトロ銀座線や日比谷線の車両は、熊本県熊本市・合志市を走る熊本電気電鉄に、南海電気鉄道の車両が銚子電気鉄道へと譲渡されている。

 しかし、これら中古車両を購入する鉄道事業者は地方の中小私鉄もしくは旧国鉄線から転換した第3セクターの鉄道事業者というのが一般的だった。それは鉄道車両が高価ゆえに、収支的な面から新造することが難しいという事情による。中古車両を購入すると、輸送費や補修の費用がかかるものの、それでも新造するよりも圧倒的に安価で済む。

 他方、JR東日本・東海・西日本や大手私鉄は、自社で鉄道車両を新造してきた。今回、東急・小田急から中古車両を購入することを決めた西武はれっきとした大手私鉄だ。しかも、東急・小田急は東京圏で西武と競い合っている。なぜ、西武はライバルともいえる東急・小田急から中古車両を購入することにしたのか?

「今回、東急・小田急の2社から中古車両を譲受することを決めたのは、弊社が取り組むCO2削減目標を達成するためです。CO2を削減するためには、使用電力の少ない車両へと置き換える必要があります。弊社は自社で車両を新造し、電力使用量の少ない車両も製造していますが、今の製造ペースではCO2の削減目標を達成できません。そうした中、弊社の車両置き換え計画と東急・小田急2社の計画が合致したので、約100両の中古車両を購入することになったのです」と説明するのは、西武鉄道広報部の担当者だ。

 購入予定の東急9000系と小田急8000形は、いずれも1980年代に導入が始まり通勤車両として活躍してきた車両だが、従来より省エネルギー化している。置き換えられる西武の車両はそれよりも古い型なので、CO2削減効果が見込める。税制では電車の減価償却期間は13年だが、通常の車両は寿命が30~40年というのが相場だ。さらに、メンテナンスによって相場より長く使用している実態がある。

関連記事

トピックス

6月6日から公開されている映画『国宝』(インスタグラムより)
【吉沢亮の演技が絶賛】歌舞伎映画『国宝』はなぜ東宝の配給なのか 松竹は「回答する立場にはございません」としつつ、「盛況となりますよう期待しております」と異例の回答
NEWSポストセブン
さいたま市大宮区のマンション内で人骨が見つかった
《さいたま市頭蓋骨殺人》「マンションに警官や鑑識が出入りして…」頭蓋骨7年間保管の齋藤純容疑者の自宅で起きた“ある異変”「遺体を捨てたゴミ捨て場はすごく目立つ場所」
NEWSポストセブン
大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン