故ジャニー喜多川氏による性被害について初めて報じられたのは半世紀以上前で、その後も繰り返し告発はあったが、世間は今まで真面目にとりあってこなかった。だが現在、少しでも見逃してはならないとばかりに、マスコミも国民もネット世論も「徹底的に調査しろ」という機運は高まりつつある。本筋からずれた議論はあれど、二度とこうしたことが起きないよう、粘り強く問題の起きた背景を調査や分析を続けていくしかない。
今回、一連の騒動がきっかけで、異なる形での性加被害や、勇気を持って発信しても無視されてきたような弱い立場の人たちも声を上げやすくなったでのはと感じる人もいるかもしれない。だが現実として、当事者たちの中にそれほど期待を寄せている、人は多くない。大半はまだ疑心暗鬼なままだ。
それは当然昨日今日で簡単に変わるものではなく、現状は本質的な部分で少しも変わっていない状態かもしれない。だが、少なくとも「被害者が無視されたり馬鹿にされる」ことがあたり前、という感覚が許されないという空気が生まれたことも事実だ。今はそれによって、被害者の気持ちがほんのわずかでも癒やされていたらと願うほかない。