女性管理職を増やしたい会社側の思惑を優先された(イメージ、dpa/時事通信フォト)
首都圏在住の主婦・島村郁子さん(仮名・30代)は、入社直後の会社の飲み会のあと、女性上司の泊まるホテルに連れて行かれ、性被害に遭った。すぐ、同僚や母親に相談したものの、やはり返ってきたのは、島村さんの傷に塩を塗り込むようなものだったという。
「まず同僚からは、男性上司じゃなくてよかったねと言われて、大きなショックを受けました。上司は仕事もできて、見た目も若々しいから、ある同僚は”うらやましい”とまで言いました。母親も、私への心配をよそに”気持ち悪い”とか”同性愛は許さない”と怒ってばかり。最初は、自分の捉え方が変だったのかもしれないと考えるようにもしましたが…」(島村さん)
島村さんの勤める会社は大手企業だったため、一応はセクハラやパワハラの社内通報窓口が設置してあった。新入社員の自分が通報すべきか相当迷ったというが、心ある一部の同僚の後押しもあって、思い切って通報したのだ。しかし、対応した女性社員の相談員は、島村さんの性被害よりも加害者への配慮ばかりを口にした。
「ちょうどジェンダーに関する議論があちこちで始まったタイミングだったのも影響しているかもしれませんが、加害女性にも事情があるとか、恋愛の形は様々だから気にしなくて良いとか、結局ジェンダーの話、という言い方をされました。仮に警察に相談した場合どうなるかと聞いても、二人とも社内にいられなくなる、女性同士だから警察も扱わないとか色々と説明され、そういうものだと無理やり納得しました。今考えると、やっぱりめちゃくちゃにごまかされていたんだなと」(島村さん)
島村さんの動きを察知した女性上司は、その後、島村さんを別部署に異動させた。もちろん、これは島村さんがそう感じているだけ、とも捉えられるだろう。しかし、被害後に加害者との関係がうまくいかなくなり、仕事が極端にやりにくくなったのは事実だ。上司は現在も会社に在籍し、現在は管理職にある一方で、島村さんは事件から一年ほどで退社。加害者だったはずの女性上司が、今度は島村さんを無視するようになり、その空気が他の社員にまで伝搬していき、もうこれ以上いられないと退社を決めたのだった。島村さんは言う。
「女性間の性被害は、場合によっては”百合”などと肯定的な性癖として語られることもあり、そこに犯罪性を見いだそうという人は少ないです。実は、当時いい感じだった男性がいたんですが、別に相手が女なら問題無いよ、というスタンスでこれにもショックを受けました。社内では完全に腫れ物扱いで、こっそり支えてくれる同僚はいましたが、私が保たなかった」(島村さん)