池田大作氏(時事通信フォト)
伸城氏の名前は、池田氏のペンネーム(山本伸一)とその師匠たる第2代会長・戸田城聖氏の名から1字ずつをとって池田氏がつけたもの。そんな側近ファミリーでも、母の活動はふつうの婦人部員と同じだったという。
「困りごとのある家庭を訪ねてお題目を一緒にあげ、励まして回っていました。そんな地道な活動は時間もかかるから、婦人部員は忙しいんです」
この厚みが選挙で機能する。伸城氏が続ける。
「婦人部は男子部、壮年部と比べて丁寧なアプローチなんです。極端な男性だと例えばコンビニ店員にいきなりお願いするような、とても票を入れてもらえそうにないやり方もやってしまう。婦人部員はそうではなく、宗教的信念がしっかりしている上に、関係を壊さないよう配慮しながら接する。それと同時に多くの相手にあたる。時間的ジレンマを抱えますが、〈質〉と〈数〉の両方を追求する努力をしていた」
ちなみに男子部長から青年部長(2021年まで男子部・女子部・学生部などを統括)に進むのが出世コース。党代表を務めた太田昭宏氏は男子部長、青年部長を経験したし、現会長の原田稔氏は学生部長、青年部長を経験している。
このパターンから男性では企業と似たヒエラルキーが浮かび上がるが、女性が男性同様に階段を上る例は見られない。むしろ婦人部は全く別の回路で影響力を有した。
例えば池田氏は、男性ばかりの意思決定機関である総務会に、鶴の一声で女性を入れるということもあったし、現場の情報を池田氏に届けるホットラインも存在した。
婦人部は組織の上下関係にとらわれず、それが男性社会に対する迫力にもなっていた。
「女性は厳しい目でリーダーにクリーンさを求めるところがあり、婦人部が声を上げ始めると、男性幹部はもう逆らえない。学会本部では、緩んだことをやればたちまち糾弾されるという緊張感がありました」(伸城氏)
(後編に続く)
【プロフィール】
広野真嗣(ひろの・しんじ)/1975年、東京都生まれ。慶応義塾大法学部卒。神戸新聞記者、猪瀬直樹事務所スタッフを経て、2015年からフリーに。2017年、『消された信仰』(小学館文庫)で小学館ノンフィクション大賞受賞。
※週刊ポスト2023年11月10日号