「病院通い」も要注意

 子供に迷惑をかけまいと思うあまり、熱心に病院に通って医者の言うままに薬を飲み、かえって元気がないお年寄りになってしまう場合もあります。

 私がこれまでに診てきた患者さんでも、あちこちの病院でたくさんの薬を処方され、真面目に飲んでいるほど、見ていて元気のない人が多い。たくさんの薬を飲むことで副作用が出やすくなり、かえって体調が悪くなることは十分あり得ることです。

 真面目にせっせと病院に通うにしろ、「子供に迷惑をかけないように」と思うにしろ、日本人は「かくあるべし」との思考に縛られるケースが多いように感じます。「年寄りは年寄りらしく」と窮屈な暮らしを自ら選ぶ人が多い印象です。しかし、かえってその考え方や暮らし方が病気のもとになっている側面があるのは否めません。

 歳を取るということは、そして定年退職を迎えるということは、「世間体をもう気にしなくていい」ということではないでしょうか。「60を過ぎたら生きたいように生きる」ことこそ、自分も周りも元気で幸せになれる近道のはずです。(了)

 

和田秀樹医師が80代以降に心身の健康を維持するための「べからず集」を紹介

ベストセラー作家の和田秀樹医師が現役世代の悩みを吹き飛ばす「生き方」のコツを指南(撮影/三浦憲治)

【プロフィール】
和田秀樹(わだ・ひでき)/1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、国際医療福祉大学大学院教授、ルネクリニック東京院院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。『80歳の壁』は2022年の年間ベストセラー総合第1位(トーハン・日販調べ)に。

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