「総合感冒薬」であり、その理由のほとんどが「服用する意味がない」

総合感冒薬は服用する意味がないという(写真/PIXTA)

かぜ薬でかえってせきが悪化

 鎮痛薬から塗り薬、目薬まで数多の市販薬が流通している中で、最も多くの専門家たちが「NO」をつきつけたのは、かぜの症状を和らげる「総合感冒薬」であり、その理由のほとんどが「服用する意味がない」というものだった。あいこ皮フ科クリニック院長で皮膚科医の柴亜伊子さんが解説する。

「かぜの原因であるウイルスをやっつけることができるのは、人間が持っている免疫力だけ。つまり薬で治療することは不可能であり、熱やのどの痛み、せき、鼻水などの症状を一時的に緩和するだけの対症療法にしかなりません。特に総合感冒薬はいろいろな症状に対応するため、有効成分が複数、少しずつ入っている。少量でも必要のない成分まで体に入れれば、それだけ副作用が出る可能性も高くなる。私は絶対にのみません」

 クリニック徳院長の高橋徳さんは無意味どころか、のむことでかえってかぜの治りが悪くなると指摘する。

「熱やせきなどの症状は、体からウイルスを排除するために必要な生体反応です。それを薬で強制的に抑えれば症状を長引かせることにつながる。家で横になって休養を取る以上の“特効薬”は存在しない。総合感冒薬でかぜを治そうとするのは時代遅れの行為とすらいえます」

 14位の「殺菌消毒薬」にも「意味がない」「時代遅れ」という意見が相次いだ。一票を投じた薬剤師の三上彰貴子さんは、「特に傷口を乾燥させるタイプの殺菌消毒薬は購入しない」と話す。

「ひと昔前まで、傷は消毒した後にかさぶたを作って治す“ドライヒーリング”が一般的でしたが、最近は傷口を乾燥させずに治すのが主流に。傷口周辺から出てくる透明な液体は『滲出液』といい、傷を治す作用のある物質が多く含まれているのです」

下痢止め薬の多用が便秘を招く

 2位以下には「刺激性の便秘薬」「H2ブロッカー胃腸薬」「下痢止め薬」と胃腸の不調を緩和する薬の名前が複数挙がった。東京武蔵野病院精神科の医師、西本昇平さんは「むしろ便秘を悪化させる」として刺激性の便秘薬の使用に警鐘を鳴らす。

「消化器科の医師の友人から『長期で服用すると耐性がついて効きづらくなるうえに、腸内細菌のバランスが乱れる原因にもなるから、のまない方がいい』と聞いてから服用を止めました。水分や食物繊維を多めにとり、運動をするなど、生活環境を見直すのが便秘にはいちばんの薬です」

 さらに重篤な副作用を懸念するのは秋葉原駅クリニックの総合内科医・佐々木欧さん。

「センナや大黄が主成分として使われている刺激性の便秘薬は、定期的に使用することで大腸に色素が沈着し、粘膜が真っ黒になって機能が低下する『大腸メラノーシス』になるリスクが生じる。また、便秘の陰には大腸がんなどの重大な病気が隠れていることもありますが、薬で便秘をやり過ごすことで発見が遅れることも気がかりです」

 そもそも、便秘の原因が市販薬の服用にあるケースも存在する。内科医の左藤桂子さんが言う。

「市販されている下痢止め薬の中には腸管の動きを一時的に止める作用を持つものがあり、そうした薬を服用することによって便秘が起きている患者は少なくありません。そのため私はお腹の調子が悪いときも下痢止め薬を使わずにビフィズス菌や善玉菌を配合した整腸剤を服用するようにしています」

 秋津医院院長の秋津壽男さんをはじめとして、多くの専門家が真っ先に名前を挙げた「H2ブロッカー胃腸薬」は強い効能が諸刃の剣となって懸念を集める結果に。

「胃酸の分泌を抑制することによって胃の痛みや胸やけの症状を改善するという、もともとは胃潰瘍の治療のために処方されていた薬です。高い効果がありますが、それ故に胃がんなど大きな病気の見落としにもつながる。胃の調子が悪い人は、まずは病院で胃の内視鏡検査を受けるべきですし、少なくとも漫然と常用する薬ではないことは覚えておいてほしい」

 健康増進クリニック院長の水上治さんもこう言い添える。

「この薬が出てきてから胃潰瘍の手術が劇的に減少したほど、画期的で効果的な市販薬であることは確かです。しかし一方で、胃酸には外から入ってきた菌やウイルスを死滅させる役割もあるため、長く服用し続けるとその働きが弱まり、殺菌力が低下して食中毒にかかるリスクが上がる。H2ブロッカー胃腸薬を服用する場合、市販薬ではなく医師に相談したうえで処方薬として出してもらうことを推奨します」

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