また、ある商品の通常品とヘルシーカップ麺の成分表を比べると、ヘルシーカップ麺には「pH調整剤」という添加物が加わっているものもあった。pH調整剤は食品の風味を安定させたり、保存性を高めたりする添加物を一括した名称だ。
「裏を返せば一括表示なので複数入れても消費者には具体的に何が入っているかわからないともいえる。特にpH調整剤はナトリウムやリン酸を含むものも多いため、知らず知らずのうちに塩分過多や、リン酸過多になる可能性があるのです」(垣田さん)
ヘルシーカップ麺にもかかわらず、実際には添加物が増えている商品が少なからずあることは事実なのだ。
作るときのお湯を一度捨てる
そうした添加物の問題に加え、ヘルシーを過信しすぎることにより生じる体への負担もある。パート主婦のSさん(56才)がため息をつく。
「忙しい中、毎日肉や魚を料理してたんぱく質をとるのは大変だから高たんぱくのカップ麺を見つけたとき、“これだ!”と思ったんです。だけど毎日お昼をこれで済ませていたら、だんだん体がだるくなってきてしまって……」
高齢になるとたんぱく質が不足しやすいことが周知されており、近年はそれを補える“高たんぱく”を謳う商品も増えている。しかし、そこには“落とし穴”があるのだ。
「たんぱく質の推奨摂取量は成人は50〜65gなので、1食あたり20gを目安にすると不足しにくい。しかし、高たんぱく質のカップ麺は大体15gほど。『高たんぱく』と言っても実際は目安に5g足りない。ヘルシーカップ麺だけに頼るのはよくありません」(望月さん・以下同)
塩分を気にする人向けに「減塩」や「塩分カット」を謳う商品があるが、そこにもトラップが存在する。
「例えば『塩分オフ』と書いてあるカップ麺でも、スープまで飲むと3gもの塩分が含まれている。WHOのガイドラインでは塩分の摂取量を1日あたり5g未満に抑えることが推奨されていますが、ヘルシーカップ麺1個だけで半分以上もの量を摂取することになり、塩分過多につながります。また塩分オフで体から塩分の排出を促すカリウムが多量に含まれている商品がありますが、カリウムもまた多量だと腎臓に負担をかける人もいます」
成分を詳細に調べるほど、残念ながら本当の意味での“ヘルシー”とは程遠いというのが結論のようだ。とはいえ安くて手軽な“庶民の味方”を食べる機会を完全になくすのは難しい。せめて上手につきあうべく、まず心がけたいのは「スープを残す」ことだ。
「スープには塩分が多量に溶けています。それを残すだけでも減塩につながります」
カップ麺に不足しがちなたんぱく質や食物繊維などを補うのも効果的だ。
「たんぱく質はサラダチキンやヨーグルト、卵焼きなど。食物繊維はひじきや白和え、おでん、きんぴらごぼうなどの総菜を加えてください。ビタミン類はサラダやみそ汁、カットフルーツなどで手軽に補えます」
毎日食べない、夜遅くに食べないなど基本的なことも忘れずにいたい。そして最後に一工夫を。
「麺に含まれているリン酸はお湯に溶け出す性質があるので、後入れスープなどの場合は一度お湯を入れて麺をほぐし、時間がきたらお湯を捨ててください。その後、新しいお湯でスープを作れば、リン酸の過剰摂取のリスクが下がります」
キャッチコピーだけを見て飛びつくのではなく、ひと手間を加えることが本当のヘルシーにつながるのだ。
※女性セブン2023年12月14日号