須美子さんとLINE通話を行う柴田さん(本人提供)
母は、子どもの人格を尊重してくれる人だったのだと思います。子どもの人生は子どものもので、自分のことは自分で決めるべきだ、という方針でした。一方で、母自身も、「自分」を本当に大切にしていました。誰かのために、無理に我慢をすることがないから、彼女の言葉には嘘がなくて、真摯なんです。それが、母が周囲から慕われる理由だとも思います。
そういう母の姿を見てきたからこそ、私は自分の人生を大切にしたい。母も、自分のために娘の人生が犠牲になるのは嫌なのでしょう。だから私と母は「遠距離介護」という形を選択することにしました。
介護離職は選択肢になかった
現在、母は入院中です。なかなか会いにいけないのですが、LINEのビデオ通話機能を使って、週2回は顔を見て会話するようにしています。
「あまり会いに行けなくてごめんね」と言うと、母は「仕事だもん。仕事が大事」と言っています。根っこの部分はいまでも変わっていないなと思わされますね。
介護離職は、私の中で選択肢にありませんでした。すべて自分がやるという覚悟で介護に臨む方を否定するつもりはないのですが、私は、一生懸命になりすぎると親子のバランスが崩れてしまうんじゃないかと思って。親子だからこそ、お互いがわがままになってしまう側面もあると思います。いま私と母は、遠距離介護という形をとっているからこそ、お互いに健全な関係を築けているんじゃないかな。
これから先、介護に関するサービスが充実して、仕事に取り組みつつも、親の介護を十分行うことができるようになっていくといいですよね。介護の形の選択肢が増えれば、がんじがらめになって追い詰められる人もずいぶん減るのではないでしょうか。
当面の目標は、お正月を実家で一緒に過ごすことです。やっぱり母は家が好きで、いまでも帰りたいようなので。そのために、現在は一時退院を病院の先生に頼んでいるところで、叶えられたらいいなと思っています。