ベリーダンス姿が意外と話題(『セクシー田中さん』公式HPより)
記事には木南さんのことを、注目を浴び始めている”遅咲きのニューヒロイン”と書いていた。言われてみれば、彼女の印象はヒロインというより演技のうまい脇役。少し変わった性格の役やどこにでもいる平々凡々目立たずおとなしい役のイメージが強く、そんな役を繊細な演技で存在感のあるキャラクターに作り上げていく。ドラマで演じる昼の田中さんも、そんな彼女のイメージのまま、メガネをかけた真面目で優秀で冴えないOL。自分の殻に閉じこもり、自分を否定し自信がなく、動きもぎこちなくて表情に乏しい。だが夜の田中さんはその真逆で妖艶で魅惑的。目や口元の表情も豊かで手足はのびやかに動き、大胆で人を惹きつける魅力がある。視聴者はこれまでとは違う木南さんの一面を見ながら、人間が持つ「二面性」を演じ分ける彼女の細やかな演技を楽しむことができる。
心理学者のユングは基本的な二面性の象徴を男性性と女性性の中に見出している。このように人は、自らの中に相反する2つのものが共存することに気が付くことがあるという。どちらも自分だが、どちらが本当の自分なのか。いや本当はどちらかを選ぶ必要はなくて、自分の中にある二面性にうまく折り合いをつけ、融合させながら、自分らしさを見つけていくことが大切だろう。両極端で振り幅の大きい二面性を持つ田中さんだが、人と関わりその人の言葉を信じ、自分を信じて勇気を出すことで、その幅が近づいていく。それに合わせて、少しずつ変化していく木南さんの表情や動き、話し方は絶妙だ。
このドラマで木南さんは、田中さんの二面性を写し出す心の機微を丁寧に演じ、本来の彼女らしさを作りあげていくプロセスを見せてくれる。本当になりたい自分を解き放ちたい人は、このドラマが参考になるかもしれない。