ライフ

追悼・伊集院静さん、亡くなる直前まで旺盛だった執筆意欲 取材同行者が語る“無頼派作家”の繊細な一面

『週刊ポスト』誌上の写真と共に伊集院静さんの素顔を振り返る

『週刊ポスト』誌上の写真と共に伊集院静さんの素顔を振り返る(写真/太田真三)

 作家・伊集院静氏が11月24日、73歳で亡くなった。10月27日には、肝内胆管がんを患い、当面の間の執筆作業を中止することを発表していたが、復帰は叶わなかった。伊集院氏が愛した土地と、本誌『週刊ポスト』誌上での連載を通じて知ることができた、その素顔を振り返ってみたい。

「その頃、私にはつき合っている若い女性が一人いた。/彼女とはコマーシャルの演出をしている折、初めて逢った。その後、彼女は女優の道を選んだ。一年後に再会、時折逢うようになった。/私がホテルに住んで半年目に、ひさしぶりに逢った」

 かつて神奈川・逗子に実在した老舗ホテルを舞台に、作家としての原点を綴った自伝的随想『なぎさホテル』で伊集院氏はこう記した。当地で過ごした1978年から1984年までの7年あまりの描写の中には、イニシャル表記ではあるが1984年に結婚し翌年死別した女優・夏目雅子さんを想起させる箇所が多々ある。

「その頃、長く交際が続いていたM子との間で、そろそろ一緒にならないか、という話題がぽつぽつと出はじめていた。(中略)遠慮がちに話をする彼女の言葉の余韻や、表情に、私たちは、そういう時期を迎えているのだろうと考えはじめていた。だが収入も安定せず、何よりも、これが自分の仕事と呼べるものも定まっていない男に結婚ができるのかどうか不安だった。

 それでも健気に、しかも一途に想いを貫きながら、つとめて明るく振る舞う彼女の姿に、私は何かを決めなくてはならないと思うようになった。/少女のあどけなさが失せ、彼女は大人の女性になりつつあった。それは結婚を敢えて意識せずとも、自然と私たちの交際が新しい段階を迎えていることを意味していた」

 大切な人、場所、時間が綴られた同作は、昨年桑田佳祐氏が楽曲制作後に読破、共感して曲名を『なぎさホテル』としたことでも話題となった。

関連記事

トピックス

被害男性は生前、社長と揉めていたという
【青森県七戸町死体遺棄事件】近隣住民が見ていた被害者男性が乗る“トラックの謎” 逮捕の社長は「赤いチェイサーに日本刀」
NEWSポストセブン
体調を見極めながらの公務へのお出ましだという(4月、東京・清瀬市。写真/JMPA)
体調不調が長引く紀子さま、宮内庁病院は「1500万円分の薬」を購入 “皇室のかかりつけ医”に炎症性腸疾患のスペシャリストが着任
女性セブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
1980年にフジテレビに入社した山村美智さんが新人時代を振り返る
元フジテレビ・山村美智さんが振り返る新人アナウンサー社員時代 「雨」と「飴」の発音で苦労、同期には黒岩祐治・神奈川県知事も
週刊ポスト
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
【視聴率『愛の不時着』超え】韓国で大ヒット『涙の女王』 余命宣告、記憶喪失、復讐など“韓国ドラマの王道”のオンパレード、 華やかな衣装にも注目
【視聴率『愛の不時着』超え】韓国で大ヒット『涙の女王』 余命宣告、記憶喪失、復讐など“韓国ドラマの王道”のオンパレード、 華やかな衣装にも注目
女性セブン
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
タイトルを狙うライバルたちが続々登場(共同通信社)
藤井聡太八冠に闘志を燃やす同世代棋士たちの包囲網 「大泣きさせた因縁の同級生」「宣戦布告した最年少プロ棋士」…“逆襲”に沸く将棋界
女性セブン