辞任を表明し、記者会見を終えた松野博一官房長官(時事通信フォト)
パワー動機は地位や能力で他の人より優れていたいという欲求で、権力や影響力を行使して他者をコントロールしたいという動機だ。議員という職業であれば、経歴が長くなればなるほどこの動機が強いと想像できる。7回当選という長い議員活動の中、尊敬される人柄と実績で人の上に立つというより、乱暴な物言いや威圧によって影響力を誇示するという対応を見せた谷川氏。有権者や記者たちを自分より下に見ているのだろう。
その感覚は松野博一官房長官も同じだったのではないだろうか。12月7日の記者会見では、午前と午後合わせて19回もこの件について問われたが、「政府の立場としてお答えは差し控える」と答えたのみ。繰り返し追及されているうちにイライラしたのか、同じ答弁を繰り返しながらどんどん口先が尖っていった。
あまりの対応にさすがの岸田文雄首相も松野氏を更迭する方向と報じられたが、翌日の記者会見でも松野氏の態度は変わらなかった。用意された書面を棒読みし、質問する記者の顔すら見ない。都合のよい質問なのか、聞かれたくない質問なのか、記者たちの方を見る時間で計ることができるのが松野氏だが、今回はほぼ視線を書面に落としたまま。何を問われても”政府として差し控える”を繰り返すのみだった。それでいて出処進退を問われると、「与えられた職責を全うしていきたい」と平然と答えていたのは何だったのか、14日には「国政に遅滞を生じさせないよう」と辞表を提出した。
安部派の中枢を担う前出の松野官房長官、世耕弘成参院幹事長、西村康稔経済産業相、萩生田光一政調会長、高木毅国会対策委員長の5人衆は「捜査中」「精査中」と言い訳し、名前があがった議員たちは「しかるべき時に」「いつかは説明責任を果たす」という聞くに堪えないコメントを連発した。5人衆は全員、役職への辞表を14日に提出したが、すでに20名以上の名前があがる裏金疑惑。国会が閉会し、東京地検特捜部が強制捜査に乗り出した後、問題となった議員たちがこの疑惑にどう決着をつけるのか見守りたい。