「性自認に苦しむ10代のサポートをしたい」
性自認の悩みを“理解してくれる誰か”でありたい
以前、佐藤はX(旧Twitter)で「私はトランスジェンダーとしても性別を変える、変えないに手術という規定があるのは悪いことではないと思っていたけど。性別変更の意思を何で誰が判断するのだろう?そこが1番気になる」と投稿していた。2023年10月、静岡家裁浜松支部が戸籍上の性別変更に手術が必要とする法律上の規定について、「憲法違反で無効」との判断を示したとの報道を受けてのことだ。
この投稿には、トランスジェンダーをはじめとする性的少数者への無理解が目立つ今の社会への不信感があるのだろうと想像すると、納得がいく。彼女は「現時点では戸籍の性別を変えるつもりはない」と言う。
「戸籍上は男性でも不自由がないというのが一番の理由です。自分が芸能人として活動できていることが理由に挙げられるのは理解していて……。それより私が気になるのは、ふつうの立場で社会に属している人たち。もっと言えば10代で性自認に苦しんでいる人たちを何かサポートができないかと考えているんです」
彼女自身、生まれた時から精神は女性でありながら、身体は男性であるという状況に常に追い込まれていた。
「中学時代は自分を全く出せなかった」
「周囲の視線に対して過敏になりすぎていて、自分を出すことが全くできなかった中学生時代でした。男子の制服を着て学校へ行くことが当たり前だったから『女性として生きたい』なんて、とても言えなかった。母親に連れて行ってもらったクリニックの医師からは、『一時的なもの』だと、睡眠薬を処方されることもありました。
そのうちに第二次性徴が始まってしまい、精神がいつも爆発寸前でした。あのとき私の言うことに同意して、理解してくれる大人がいたら、どんなに気持ちが楽だったかと思うんです。だから私はその“誰か”になりたいなって」
続けて「30代になってやっとなりたい自分になれた」とホッとしたような笑顔を見せる。ここまで辿り着くには、どれだけ多くの困難を超えてきたのだろうか。
「トランスジェンダーという言葉には、どこかに闇を感じさせる印象があります。映画でも性転換手術をして、最後に亡くなってしまうとか。アウティングされた人が自死を選ぶ悲劇も実際にあります。でも私はそんなイメージを払拭して、明るい未来を皆さんに見せられたらいいなと思うんです」
その明るい未来にパートナーはいるのかと尋ねると、彼女は声を出して笑った。
「今はないけど、またいつかそういう人に会えたらいいな、と芸能人ぽいことを言っておきますね(笑)。でもそういう出会いなら、私は海外にいるときのほうが自然に増えたかも。日本だとどうしても偏見で見られていた部分もあったから。とにかく全部の話をひっくるめて、一歩進むことはとても大事です!」
「30代になってなりたい自分になれました」